【高校数学】分母に項が3つあるときの有理化のコツと徹底解説
この記事では、分母に項が3つある分数の「有理化」について、高校生にもわかりやすく解説します。一般的な有理化では分母にルートが1つや2つという場合が多いですが、分母に項が3つある場合は少し工夫が必要です。仕組みや考え方を例題を交えて丁寧に学んでいきましょう。
目次
有理化とは?
数学における「有理化」とは、分数の分母にある無理数(特に平方根)を取り除き、分母を有理数(整数や分数)にする操作のことです。例えば、
\[ \frac{1}{\sqrt{2}} \quad \rightarrow \quad \frac{\sqrt{2}}{2} \]
のように、分母にあるルートを消すために分子分母に \(\sqrt{2}\) をかけて、有理数の形に整えます。
分母に項が3つあるとはどういうことか
通常の有理化では、分母が \(\sqrt{a}\) や \(\sqrt{a} + \sqrt{b}\) のように項が1つまたは2つですが、次のように3つの項が含まれる分数もあります:
\[ \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}} \]
このようなときも、分母からすべてのルートを消すための工夫が必要です。
3項の有理化の基本的な考え方と手順
分母に3つの項がある場合、次のような手順で有理化します。
- まず、2つの項の和をひとまとまりにして、それに対する共役な式を作る。
- 共役な式とは、\((a + b)(a – b) = a^2 – b^2\) の形を利用するためのペア。
- 計算を繰り返し、無理数が完全に分母から消えるまで続ける。
具体的な手順は例題で確認しましょう。
例題と解説
例題1:
\[ \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}} \]
この分母には項が3つあります。
まず、\(\sqrt{2} + \sqrt{3}\) の部分に注目し、その共役である \(\sqrt{2} – \sqrt{3}\) を使います。
分子分母に \(\sqrt{2} – \sqrt{3}\) をかけます:
\[ \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{3}} \times \frac{\sqrt{2} – \sqrt{3}}{\sqrt{2} – \sqrt{3}} = \frac{\sqrt{2} – \sqrt{3}}{(1 + \sqrt{2} + \sqrt{3})(\sqrt{2} – \sqrt{3})} \]
分母を展開します:
\[ (1 + \sqrt{2} + \sqrt{3})(\sqrt{2} – \sqrt{3}) = (1)(\sqrt{2} – \sqrt{3}) + \sqrt{2}(\sqrt{2} – \sqrt{3}) + \sqrt{3}(\sqrt{2} – \sqrt{3}) \]
各項を計算すると:
- \(1 \cdot (\sqrt{2} – \sqrt{3}) = \sqrt{2} – \sqrt{3}\)
- \(\sqrt{2} \cdot (\sqrt{2} – \sqrt{3}) = 2 – \sqrt{6}\)
- \(\sqrt{3} \cdot (\sqrt{2} – \sqrt{3}) = \sqrt{6} – 3\)
以上をすべて足すと:
\[ (\sqrt{2} – \sqrt{3}) + (2 – \sqrt{6}) + (\sqrt{6} – 3) = \sqrt{2} – \sqrt{3} + 2 – \sqrt{6} + \sqrt{6} – 3 = \sqrt{2} – \sqrt{3} – 1 \]
よって、最終的な答えは:
\[ \frac{\sqrt{2} – \sqrt{3}}{\sqrt{2} – \sqrt{3} – 1} \]
これでも分母にルートが含まれているので、さらに有理化を続ける必要があります。今度は分母 \(\sqrt{2} – \sqrt{3} – 1\) に注目して、新たな共役をかけるという形になります。
このように、有理化は一度で終わらないこともあります。粘り強く共役な式を見つけて処理を進めましょう。
例題2:
\[ \frac{1}{\sqrt{2} + \sqrt{3} + \sqrt{5}} \]
この場合も、まず2つの項に注目します。たとえば、\(\sqrt{2} + \sqrt{3}\) に対して \(\sqrt{2} – \sqrt{3}\) をかけ、段階的にルートを減らしていきます。
ただし、項が3つとも異なるルートの場合、複雑な式変形が必要になり、何度か共役な式との積をとることになります。時間はかかりますが、確実にルートは減っていきます。
練習問題
以下の分数を有理化してみましょう。解答は自分でノートに書いて確認してみてください。
- \(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{3} + \sqrt{5} + 2}\)
- \(\displaystyle \frac{1}{1 + \sqrt{2} + \sqrt{5}}\)
- \(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{2} + \sqrt{3} + \sqrt{6}}\)
ヒント:まずは2項だけに注目して共役をかけ、段階的にルートを減らしていくとよいでしょう。
まとめ
- 有理化とは、分母から無理数(ルート)を取り除く操作です。
- 項が3つある場合でも、共役を使って段階的に処理すれば有理化できます。
- すぐにすべてのルートが消えるとは限らないため、根気強く計算を続けることが大切です。
「有理化」は大学入試でも頻出です。しっかりマスターしておきましょう!