【図解でわかる】労働供給曲線が動く理由とは?高校生でも理解できる経済学
目次
労働供給曲線とは?
労働供給曲線とは、「人々がどれくらい働きたいか(労働時間)」と「賃金」の関係を示す曲線です。通常、賃金が高くなるほど、働きたい人が増えるので、右上がりの形になります。
経済学では、縦軸に「実質賃金」、横軸に「労働時間」や「労働者の数」をとってグラフを描きます。
例えば、最低賃金が1時間あたり1,000円のときよりも、1,500円に上がったときのほうが「働きたい」と思う人は増えますね。これが労働供給曲線の基本的な考え方です。
なぜ労働供給曲線はシフトするのか?
労働供給曲線が「動く(シフトする)」というのは、「ある賃金のときに働く人の数(または労働時間)」が変化することを意味します。
たとえば、同じ賃金でも「働きたい人が増える」と、曲線は右にシフトし、「働きたい人が減る」と左にシフトします。
ここで注意してほしいのは、「曲線上の移動」ではなく「曲線自体の位置が変わる」ことです。
労働供給曲線の主なシフト要因
以下は、労働供給曲線がシフトする代表的な要因です。
- 人口構成の変化
若者が増えると労働力人口が増え、供給曲線は右へシフトします。逆に高齢化で引退する人が増えると、左へシフトします。 - 価値観や働き方の変化
「ワークライフバランス」を重視する価値観が広がると、同じ賃金でも「そこまで働きたくない」という人が増え、供給曲線は左にシフトします。 - 他の所得(非労働所得)の増加
たとえば親からの仕送りや年金など、働かなくても得られる所得が増えると、働く必要性が下がって労働供給は減少し、曲線は左へシフトします。 数式で表すと、効用最大化の条件が変化するため、 \[ \frac{MU_L}{MU_C} = w \] という関係式の中の消費(\( C \))の必要性が低くなり、労働時間(\( L \))が減る傾向になります。 - 教育水準の変化
高学歴化が進むと、人々は長く教育を受けるため、若年層の労働供給は一時的に減少し、左にシフトすることがあります。 - 育児や介護の負担
育児休業や介護離職などの増加も労働供給を減らす要因になります。特に女性の労働参加に大きく影響します。 - 移民政策・労働移動
外国人労働者の受け入れを増やす政策が実施されると、労働供給が増加し、曲線は右にシフトします。 - 税制や給付制度の変更
働くと失われる給付(例:生活保護や子育て給付)があると、労働供給は減る傾向があります。逆に「働くと得する」制度があれば、労働供給は増えます。
実生活での例
- 大学生のアルバイト
試験期間中は勉強が忙しくなるため、賃金が同じでもシフトを減らす人が増えます。これは一時的な左シフトの例です。 - コロナ禍による在宅勤務の普及
通勤の負担が減ったことで、子育て中の人が働きやすくなり、労働供給が増えた(右シフト)事例もあります。 - 定年延長制度
企業が60歳以上の人を引き続き雇うようになれば、高齢者の労働参加が進み、労働供給は右にシフトします。
まとめ
労働供給曲線は、賃金と労働力の関係を示す重要な概念です。そして、その曲線が「なぜ動くのか」を理解することで、現実の労働市場の変化を読み取れるようになります。
以下が要点のまとめです:
- 労働供給曲線は「賃金と労働供給の関係」を表す。
- シフトとは「曲線の位置」が変わること。
- シフトの要因は人口、価値観、制度、所得、教育など多岐にわたる。
- 現実の社会変化と密接につながっている。
高校生の皆さんも、ニュースや社会の動きを見るときに「これは労働供給に影響しそうだな」と考えるクセをつけると、経済学の理解がぐっと深まります。