なぜ単調関数の不連続点は高々可算個なのか?徹底解説!

なぜ単調関数の不連続点は高々可算個なのか?徹底解説!

目次

単調関数とは?

単調関数とは、関数の定義域において値が常に増加または減少する関数のことです。
代表的な例には以下の2種類があります:

  • 単調増加関数: \( x_1 < x_2 \) ならば \( f(x_1) \leq f(x_2) \)
  • 単調減少関数: \( x_1 < x_2 \) ならば \( f(x_1) \geq f(x_2) \)

関数が単調であると、グラフは滑らかである必要はありませんが、上向きまたは下向きに進むことだけは保証されます。

不連続点とは?

不連続点とは、ある点において関数の極限が存在しない、または極限が存在しても関数値と一致しない点のことです。
より形式的には、点 \( c \) において関数 \( f \) が不連続であるとは、次のいずれかが成り立つときです:

  • \( \lim_{x \to c^-} f(x) \neq \lim_{x \to c^+} f(x) \)
  • 極限が存在していても \( \lim_{x \to c} f(x) \neq f(c) \)

単調関数においては、通常の関数のような「ぐちゃぐちゃ」な不連続性は起きません。
しかし「跳び」や「段差」のようなジャンプ不連続が発生することはあります。

単調関数の不連続点の性質

単調関数における不連続点には次のような性質があります:

  • すべての不連続点は跳び不連続(ジャンプ不連続)である。
  • 無限個の不連続点を持つことはありうるが、それらは高々可算個である。

この性質は単調関数特有のものであり、一般の関数では不連続点が非可算無限集合になることもあります。

証明:不連続点は高々可算個

証明の基本的な考え方は、「各不連続点には“ジャンプの大きさ”があること」と「そのジャンプの大きさを区別できるような方法でラベリングできること」を利用します。

ステップ1:ジャンプの定義

関数 \( f \) の点 \( x \) におけるジャンプの大きさは次で定義されます: \[ J(x) = \lim_{t \to x^+} f(t) – \lim_{t \to x^-} f(t) \] この \( J(x) \) が 0 でなければ、そこはジャンプ不連続です。

ステップ2:ジャンプが有界であることの利用

単調関数は区間内で有界です。よって全体のジャンプの総和は有限: \[ \sum_{x \in D} J(x) \leq f(b) – f(a) \] ここで \( D \) は不連続点の集合です。

ステップ3:不連続点集合 \( D \) が可算であることの導出

各 \( n \in \mathbb{N} \) に対して、次の集合を定義します: \[ D_n = \left\{ x \in [a, b] \mid J(x) \geq \frac{1}{n} \right\} \] このとき、各 \( D_n \) は有限集合です。なぜなら: \[ \sum_{x \in D_n} J(x) \geq \frac{1}{n} \cdot \#D_n \leq f(b) – f(a) \Rightarrow \#D_n \leq n \cdot (f(b) – f(a)) \] よって、全ての不連続点の集合 \( D \) は次の和集合で書けます: \[ D = \bigcup_{n=1}^\infty D_n \] したがって、可算個の有限集合の和集合であり、可算集合です。

具体例

例1:ステップ関数

\[ f(x) = \begin{cases} 0 & \text{if } x < 1 \\ 1 & \text{if } x \geq 1 \end{cases} \] これは単調増加関数であり、点 \( x = 1 \) でジャンプ不連続があります。不連続点は1つだけなので可算。

例2:ラショナル・ステップ関数

\[ f(x) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2^n} \chi_{[q_n, \infty)}(x) \] ただし \( \{ q_n \} \) は有理数の列(重複なし)で、\( \chi \) は指示関数。
これは右連続な単調増加関数で、不連続点は \( \{q_n\} \) のみ。よって可算。

なぜこの性質が重要なのか?

この性質は実解析・測度論・確率論など多くの分野で重要な役割を果たします:

  • ルベーグ積分論: 可測関数の定義や単調収束定理の背景にこの性質がある。
  • 確率論: 累積分布関数(CDF)は単調増加関数。したがって不連続点が高々可算個。
  • 応用数学: データの段階的変化(ジャンプ)を扱うモデルにおいて解析が容易になる。

また、この性質は直感的に「単調性が関数の“乱れ”をある程度制限してくれる」ことを意味しています。

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