【実解析の核心】ディニの定理をわかりやすく徹底解説

【実解析の核心】ディニの定理をわかりやすく徹底解説

目次

ディニの定理とは

ディニの定理(Dini’s Theorem)は、実解析において関数列の一様収束に関する重要な結果です。 特に、関数列が単調に収束し、かつ極限関数が連続である場合に、一様収束が成立することを示します。 この定理は収束の性質を調べる上で非常に有用で、関数解析や偏微分方程式の理論などでも応用されます。

背景と重要性

点ごとの収束と一様収束は一般には異なる概念です。点ごとの収束だけでは、関数の極限操作(積分や微分など)が保証されないことがあります。一様収束はそうした操作の正当化を可能にします。

ディニの定理は、次のような問題意識に答えるものです:

  • 点ごとの収束が一様収束に強化できるための十分条件は?
  • 単調性と連続性という性質が、どのように一様収束と関係するか?

ディニの定理の主張

定理(ディニの定理):
次を仮定する。

  • \( K \) はコンパクトな位相空間である。
  • \( f_n: K \to \mathbb{R} \) はすべて連続関数であり、関数列 \( \{f_n\} \) は単調減少:すなわち、\( f_{n+1}(x) \leq f_n(x) \) がすべての \( x \in K \) に対して成り立つ。
  • \( f_n(x) \to f(x) \) と点ごとに収束し、\( f \) は連続関数である。

このとき、\( f_n \to f \) は一様収束する。

ディニの定理の証明

証明の大まかな流れは次の通りです:

  1. コンパクト性を用いて、点ごとの収束から一様収束を導く。
  2. 単調性を利用して、最大値をとる点の存在を保証する。

証明:

\(\epsilon > 0\) を任意にとる。各 \(x \in K\) に対し、\(f_n(x) \to f(x)\) なので、ある \(N_x\) に対して \(n \geq N_x\) ならば

\[ 0 \leq f_n(x) – f(x) < \epsilon. \]

関数列は単調減少なので、\(n \geq N_x\) なら常に \(f_n(x) – f(x) < \epsilon\) が成り立つ。 各点においてこの条件を満たす \(N_x\) に対して、開集合

\[ U_x := \{ y \in K : f_n(y) – f(y) < \epsilon \} \]

は開集合で、\(x \in U_x\)。これにより \(\{U_x\}_{x \in K}\) は \(K\) の開被覆になります。\(K\) はコンパクトなので有限部分被覆が存在し、最大の \(N\) をとれば、すべての \(x \in K\) に対して \(f_n(x) – f(x) < \epsilon\) が成立。

ゆえに、収束は一様である。□

具体例

次に、実際にディニの定理を適用できる例を紹介します。

例1:単純な関数列

\[ f_n(x) = \sqrt{x + \frac{1}{n}} \quad (x \in [0,1]) \]

この関数列は \(f_n(x) \to \sqrt{x}\) に点ごとに収束します。しかも、\(f_n\) は単調減少、かつ各 \(f_n\) は連続。極限関数も連続なので、ディニの定理により一様収束します。

例2:指数関数の減衰

\[ f_n(x) = e^{-nx} \quad (x \in [0,1]) \]

この関数列も \(f(x) = 0\) に点ごとに収束し、単調減少かつ各関数は連続。\(f\) も連続なので一様収束する。

補足と注意点

  • 単調増加の場合にも、定理は成立する。ただし、増加の方向に合わせて収束を考える必要がある。
  • 定理のカギは「コンパクト性」と「単調性」。このどちらかが欠けると一様収束は保証されない。
  • 非コンパクトな区間(例:\([0,\infty)\))では、ディニの定理は使えない。
  • 連続でない極限関数では一様収束しない例が多数存在。

ディニの定理は、関数列の収束性を深く理解するための強力な道具です。特に、実解析の授業や教科書では「収束の種類の違い」を学ぶうえで、ディニの定理が自然に現れる場面が多くあります。

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