【高校・大学数学】はさみうちの原理を徹底解説|定義から豊富な例題まで

【高校・大学数学】はさみうちの原理を徹底解説|定義から豊富な例題まで

目次

はさみうちの原理とは

「はさみうちの原理」とは、ある関数や数列の極限を直接求めるのが難しい場合に、上下から挟む2つの関数や数列の極限を使って、対象の極限を求めるための重要な数学的手法です。

簡単に言えば、ある関数 \( f(x) \) を別の2つの関数 \( g(x) \), \( h(x) \) によって「はさみうち」にして、その2つの極限が同じなら、\( f(x) \) の極限もその値になる、という理屈です。

数学的定義

関数の極限に関する「はさみうちの原理」の数学的定義は次の通りです。

関数 \( f(x) \), \( g(x) \), \( h(x) \) がある点 \( a \) の近傍で次を満たしているとします:

  • \( g(x) \leq f(x) \leq h(x) \) (ただし、\( x \) は \( a \) の近傍)
  • \( \lim_{x \to a} g(x) = \lim_{x \to a} h(x) = L \)

このとき、

\[ \lim_{x \to a} f(x) = L \]

が成り立ちます。

同様に、数列に対しても次のように定義されます。

数列 \( \{a_n\}, \{b_n\}, \{c_n\} \) があり、ある自然数 \( N \) 以降で常に

\[ a_n \leq b_n \leq c_n \]

を満たし、かつ

\[ \lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} c_n = L \]

ならば、

\[ \lim_{n \to \infty} b_n = L \]

が成り立ちます。

関数での例題

例題1:三角関数の極限

次の極限を求めよ。

\[ \lim_{x \to 0} x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) \]

この関数は \( x = 0 \) で定義されていませんが、次の評価ができます:

\[ -1 \leq \sin\left(\frac{1}{x}\right) \leq 1 \]

両辺に \( x^2 \geq 0 \) をかけると、

\[ -x^2 \leq x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) \leq x^2 \]

ここで、

\[ \lim_{x \to 0} -x^2 = \lim_{x \to 0} x^2 = 0 \]

よって、はさみうちの原理より、

\[ \lim_{x \to 0} x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) = 0 \]

例題2:無理数の極限評価

\[ \lim_{x \to 0} x \sqrt{1 + \cos\left(\frac{1}{x}\right)} \]

\(\cos\left(\frac{1}{x}\right)\) は \([-1, 1]\) にあるので、内部の平方根は \([0, 2]\)。

\[ \sqrt{1 + \cos\left(\frac{1}{x}\right)} \in [0, \sqrt{2}] \]

よって、

\[ 0 \leq x \sqrt{1 + \cos\left(\frac{1}{x}\right)} \leq x \sqrt{2} \quad (x > 0) \]

両辺の極限が 0 なので、対象の関数も 0 に収束します。

数列での例題

例題1:交互に変動する数列

数列 \( b_n = \frac{(-1)^n}{n} \) の極限を求める。

まず、上下の数列を次のようにとります。

\[ -\frac{1}{n} \leq \frac{(-1)^n}{n} \leq \frac{1}{n} \]

両辺の極限は 0 なので、はさみうちの原理より

\[ \lim_{n \to \infty} \frac{(-1)^n}{n} = 0 \]

例題2:対数と数列

\[ a_n = n \log\left(1 + \frac{1}{n}\right) \]

対数の近似より、

\[ \frac{1}{n+1} < \log\left(1 + \frac{1}{n}\right) < \frac{1}{n} \]

両辺に \( n \) をかけて:

\[ \frac{n}{n+1} < n \log\left(1 + \frac{1}{n} \right) < 1 \]

左辺の極限は 1、右辺も 1 なので、

\[ \lim_{n \to \infty} n \log\left(1 + \frac{1}{n} \right) = 1 \]

典型的な使い方

はさみうちの原理は以下のような状況で使われます:

  • 定義からの極限計算が困難なとき
  • 振動する関数の極限評価(例:\(\sin(1/x)\), \(\cos(n)\))
  • 無理数や対数を含む関数の評価

注意点とよくあるミス

  • 上下の関数または数列の極限が一致しない場合は使えません
  • 挟んでいる範囲が正しく設定されていないと、誤った結論を導く可能性があります
  • 「常に」挟まれている必要があり、一部の区間だけでは不十分です

まとめ

はさみうちの原理は、極限の値を直接求めることが困難なときに威力を発揮するテクニックです。高校数学や大学初年度の解析においても頻出であり、確実にマスターしておくべき基本的かつ強力な道具です。

特に「挟む」評価式を見抜く力や、上下の関数や数列の極限を正しく計算する力が求められます。多くの例題を通して慣れることで、数学的直観力も鍛えられていくでしょう。

コメントは受け付けていません。