【保存版】コーシーの平均値の定理をゼロから徹底解説!定義・証明・例題まで
目次
コーシーの平均値の定理とは
コーシーの平均値の定理(Cauchy’s Mean Value Theorem)は、微分積分学における重要な定理のひとつで、ラグランジュの平均値の定理の一般化です。 2つの関数が同時に滑らかである場合に、それらの変化の比に関する平均的な性質を記述します。
関数 \( f \) と \( g \) が区間 \( [a, b] \) 上で連続、かつ開区間 \( (a, b) \) 上で微分可能であり、さらに \( g'(x) \ne 0 \) がすべての \( x \in (a, b) \) に対して成り立つとき、ある \( c \in (a, b) \) が存在して
\[ \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} = \frac{f'(c)}{g'(c)} \]
が成り立ちます。
ラグランジュの平均値の定理との関係
ラグランジュの平均値の定理は、コーシーの平均値の定理の特別な場合です。 ラグランジュの定理では \( g(x) = x \) を取ることで、コーシーの定理から導くことができます。
ラグランジュの平均値の定理: \[ f \text{ が } [a, b] \text{ 上で連続、} (a, b) \text{ で微分可能なら、ある } c \in (a, b) \text{ が存在して} \] \[ f(b) – f(a) = f'(c)(b – a) \]
は、 \[ g(x) = x \Rightarrow g'(x) = 1 \] を代入することで、コーシーの平均値の定理の結果に一致します。
コーシーの平均値の定理の証明
ロルの定理を用いて証明するのが一般的です。以下にその手順を示します。
ステップ1: 関数 \( \phi(x) = f(x)(g(b) – g(a)) – g(x)(f(b) – f(a)) \) を考える。
この関数 \( \phi(x) \) は連続かつ微分可能で、次のように構成されています: \[ \phi(a) = f(a)(g(b) – g(a)) – g(a)(f(b) – f(a)) \] \[ \phi(b) = f(b)(g(b) – g(a)) – g(b)(f(b) – f(a)) \]
よって、\( \phi(a) = \phi(b) \) となり、ロルの定理よりある \( c \in (a, b) \) において \( \phi'(c) = 0 \) となる。
\[ \phi'(x) = f'(x)(g(b) – g(a)) – g'(x)(f(b) – f(a)) \] よって、 \[ \phi'(c) = f'(c)(g(b) – g(a)) – g'(c)(f(b) – f(a)) = 0 \] \[ \Rightarrow \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{f(b) – f(a)}{g(b) – g(a)} \] となり、定理が証明されます。
具体例
例1:関数 \( f(x) = \ln x \), \( g(x) = x \)
区間 \( [1, e] \) において、両関数とも連続かつ微分可能です。 \[ \frac{f(e) – f(1)}{g(e) – g(1)} = \frac{\ln e – \ln 1}{e – 1} = \frac{1 – 0}{e – 1} \] 一方、右辺はある \( c \in (1, e) \) における \[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{1/c}{1} = \frac{1}{c} \] となるので、 \[ \frac{1}{c} = \frac{1}{e – 1} \Rightarrow c = e – 1 \in (1, e) \] よって、コーシーの平均値の定理が成り立つことが確認できます。
例2:\( f(x) = x^2 \), \( g(x) = x + 1 \), 区間 \( [1, 3] \)
\[ \frac{f(3) – f(1)}{g(3) – g(1)} = \frac{9 – 1}{4 – 2} = \frac{8}{2} = 4 \] また、\( f'(x) = 2x \), \( g'(x) = 1 \) なので、 \[ \frac{f'(c)}{g'(c)} = \frac{2c}{1} = 2c \Rightarrow 2c = 4 \Rightarrow c = 2 \in (1, 3) \] 条件を満たす \( c \) が存在することがわかります。
応用と発展的内容
コーシーの平均値の定理は、不定形の極限評価(ロピタルの定理)や、関数の変化の挙動の分析、微分方程式の理論など、さまざまな分野に応用されます。
ロピタルの定理との関係
\( \displaystyle \lim_{x \to a} \frac{f(x)}{g(x)} \) の極限が不定形(たとえば \( 0/0 \) や \( \infty/\infty \))になる場合、コーシーの平均値の定理を用いることで、以下のようにロピタルの定理が導かれます。 \[ \lim_{x \to a} \frac{f(x)}{g(x)} = \lim_{x \to a} \frac{f'(x)}{g'(x)} \] この定理の根底には、コーシーの平均値の定理が存在しています。
関数の増減や凹凸の解析
ある関数がどのように変化するかを、他の基準関数との比較で調べたいときに、コーシーの平均値の定理は非常に有効です。
実数関数の性質に関する証明
実数関数の単調性、周期性、対称性などの性質の証明にも応用されます。 特に微分の符号を比較することで、関数の変化を捉える際に役立ちます。
以上がコーシーの平均値の定理に関する徹底解説です。