ガンマ関数とベータ関数の関係を解説

ガンマ関数とベータ関数の関係を解説

目次

ガンマ関数とは

ガンマ関数(Gamma function)は、階乗の概念を実数・複素数へと拡張する関数です。定義は次のようになります:

\[ \Gamma(z) = \int_0^{\infty} t^{z-1} e^{-t} \, dt \quad (\Re(z) > 0) \]

この関数は、自然数 \( n \) に対して次の性質を持ちます:

\[ \Gamma(n) = (n-1)! \]

例えば、

  • \( \Gamma(1) = 0! = 1 \)
  • \( \Gamma(2) = 1! = 1 \)
  • \( \Gamma(3) = 2! = 2 \)

また、ガンマ関数には次の漸化式が成り立ちます:

\[ \Gamma(z+1) = z \Gamma(z) \]

ベータ関数とは

ベータ関数(Beta function)は、2つの正の実数引数を取る特殊関数で、次のように定義されます:

\[ B(x, y) = \int_0^1 t^{x-1}(1 – t)^{y-1} \, dt \quad (x > 0, y > 0) \]

ベータ関数は確率論や統計学、特にベータ分布の密度関数で登場します。また、ガンマ関数との関係が非常に深いことで知られています。

ガンマ関数とベータ関数の関係式

ガンマ関数とベータ関数の最も有名な関係式は次の通りです:

\[ B(x, y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x + y)} \]

この式は、ベータ関数をガンマ関数の積で表すもので、両者の深い関係を示しています。

関係式の導出(証明)

以下に、上記の関係式を導出します。

1. ベータ関数の定義を使用

\[ B(x, y) = \int_0^1 t^{x-1}(1 – t)^{y-1} \, dt \]

2. ガンマ関数の積

\[ \Gamma(x)\Gamma(y) = \int_0^\infty \int_0^\infty s^{x-1} e^{-s} t^{y-1} e^{-t} \, ds \, dt \]

ここで、変数変換を行います:

  • \( u = \frac{s}{s + t}, \quad v = s + t \)

ヤコビアン(Jacobian)を用いて積分変数を変換し、積分範囲を0から1に変換することで、

\[ \Gamma(x)\Gamma(y) = \int_0^1 u^{x-1}(1 – u)^{y-1} \, du \cdot \int_0^\infty v^{x + y – 1} e^{-v} \, dv \]

したがって、

\[ \Gamma(x)\Gamma(y) = B(x, y)\Gamma(x + y) \]

この式を整理すると、

\[ B(x, y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x + y)} \]

が得られます。

具体例と応用

例1:\( B(1,1) \)

\[ B(1,1) = \int_0^1 t^{0}(1 – t)^{0} \, dt = \int_0^1 1 \, dt = 1 \]

また、ガンマ関数を使って確認すると:

\[ B(1,1) = \frac{\Gamma(1)\Gamma(1)}{\Gamma(2)} = \frac{1 \cdot 1}{1} = 1 \]

例2:\( B(2,3) \)

\[ B(2,3) = \frac{\Gamma(2)\Gamma(3)}{\Gamma(5)} = \frac{1 \cdot 2}{24} = \frac{1}{12} \]

応用:ベータ分布の正規化定数

ベータ分布の確率密度関数(PDF)は次のように定義されます:

\[ f(x; \alpha, \beta) = \frac{x^{\alpha – 1}(1 – x)^{\beta – 1}}{B(\alpha, \beta)}, \quad 0 < x < 1 \]

ここで、ベータ関数 \( B(\alpha, \beta) \) が分母にあることで、積分値が1となるよう正規化されています。

まとめ

  • ガンマ関数は階乗の拡張であり、積分で定義されます。
  • ベータ関数は確率論や統計学で広く使われる特殊関数です。
  • 両者には、 \[ B(x, y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x + y)} \] という深い関係があります。
  • この関係は変数変換による積分操作から導出され、応用例も多数存在します。

ガンマ関数とベータ関数を理解することで、解析学や統計学における多くの高度な概念が明瞭になります。この記事がその一助となれば幸いです。

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