ベータ関数の定義・性質・応用
目次
ベータ関数の定義
ベータ関数(Beta function)は、2つの正の実数 \( x > 0 \), \( y > 0 \) に対して以下の定積分で定義される特殊関数です。
\[ B(x, y) = \int_0^1 t^{x-1} (1 – t)^{y-1} \, dt \]
この関数は、特に確率論や統計学、物理学など多くの分野で現れます。
ガンマ関数との関係
ベータ関数は、ガンマ関数との間に以下の美しい関係を持っています:
\[ B(x, y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x + y)} \]
ここで、ガンマ関数 \( \Gamma(x) \) は以下で定義される関数です:
\[ \Gamma(x) = \int_0^\infty t^{x-1} e^{-t} \, dt \]
この関係は証明にも使われ、ベータ関数の性質を導く上で非常に便利です。
ベータ関数の性質
- 対称性: \( B(x, y) = B(y, x) \)
- 再帰関係: \[ B(x, y) = \frac{x – 1}{x + y – 1} B(x – 1, y) \quad (\text{ただし } x > 1) \]
- 単位区間での定義: 積分範囲が \( [0, 1] \) に限られるため、確率分布との親和性が高い。
- 積分による表現: \( B(x, y) = 2 \int_0^{\pi/2} \sin^{2x-1} \theta \cos^{2y-1} \theta \, d\theta \)(トリゴノメトリックな形)
具体例と計算
例1: \( B(1, 1) \)
\[ B(1, 1) = \int_0^1 t^{0}(1 – t)^{0} dt = \int_0^1 1 \, dt = 1 \]
例2: \( B(2, 3) \)
\[ B(2, 3) = \int_0^1 t^{1}(1 – t)^{2} dt = \int_0^1 (t – 2t^2 + t^3) \, dt \] \[ = \left[ \frac{t^2}{2} – \frac{2t^3}{3} + \frac{t^4}{4} \right]_0^1 = \frac{1}{2} – \frac{2}{3} + \frac{1}{4} = \frac{1}{12} \]
例3: ガンマ関数を使って計算する場合:
\[ B(2, 3) = \frac{\Gamma(2)\Gamma(3)}{\Gamma(5)} = \frac{1! \cdot 2!}{4!} = \frac{1 \cdot 2}{24} = \frac{1}{12} \]
ベータ関数の応用
1. ベータ分布
ベータ関数は、確率分布であるベータ分布の正規化定数として用いられます。ベータ分布の確率密度関数は以下の通りです:
\[ f(t; \alpha, \beta) = \frac{1}{B(\alpha, \beta)} t^{\alpha – 1}(1 – t)^{\beta – 1}, \quad 0 < t < 1 \]
ここで、\( \alpha, \beta > 0 \) は形状パラメータで、ベータ関数が分布全体の積分を1にする役割を担っています。
2. 統計学的推定
ベイズ推定などでは、ベータ分布が共役事前分布として用いられ、ベータ関数の理解が欠かせません。
3. 物理学と工学
熱力学や量子力学の一部では、特殊関数としてベータ関数が数式の中に現れることがあります。
4. 数値積分
ベータ関数は数値積分のテスト関数や解析解の比較対象としても用いられます。
まとめ
ベータ関数は、定義そのものは単純な定積分ですが、ガンマ関数との深い関係や、多様な性質、具体的な応用先を持つ強力な特殊関数です。特に確率分布とのつながりは強く、統計学における重要な役割を担っています。数学の理解を深めたい方や、統計学を学ぶ方にとっては必須の関数と言えるでしょう。