原始関数と不定積分
目次
原始関数とは?
関数 \( f(x) \) に対して、その導関数が \( f(x) \) となるような関数 \( F(x) \) を 原始関数 といいます。つまり、
\[ \frac{d}{dx} F(x) = f(x) \]
という関係が成り立つとき、\( F(x) \) は \( f(x) \) の原始関数です。
例えば、\( f(x) = 2x \) の原始関数は \( F(x) = x^2 \) です。なぜなら、
\[ \frac{d}{dx} x^2 = 2x \]
不定積分の定義
原始関数の集合を一つの記号で表すために用いられるのが 不定積分 です。記号的には次のように書きます。
\[ \int f(x)\,dx = F(x) + C \]
ここで \( F(x) \) は \( f(x) \) の原始関数であり、\( C \) は積分定数と呼ばれる任意の定数です。これは、原始関数が定数分だけずれる無限個の関数からなることを意味しています。
積分定数 \( C \) の意味
微分は定数項が消えてしまうため、原始関数は常に定数項の分だけ不定になります。したがって、不定積分を用いるときは、必ず「+ C」を忘れずに書く必要があります。
例: \[ \int 3x^2\,dx = x^3 + C \]
なぜなら、\( \frac{d}{dx}(x^3 + C) = 3x^2 \) であり、任意の \( C \in \mathbb{R} \) に対してこの関係が成り立つからです。
基本的な不定積分公式
以下に代表的な不定積分の公式を示します。
- \( \int x^n\,dx = \frac{x^{n+1}}{n+1} + C \quad (n \neq -1) \)
- \( \int \frac{1}{x}\,dx = \ln|x| + C \)
- \( \int e^x\,dx = e^x + C \)
- \( \int \sin x\,dx = -\cos x + C \)
- \( \int \cos x\,dx = \sin x + C \)
- \( \int \frac{1}{1 + x^2}\,dx = \tan^{-1}x + C \)
- \( \int \frac{1}{\sqrt{1 – x^2}}\,dx = \sin^{-1}x + C \)
例題で理解する不定積分
例1: \( \int (4x^3 – 2x + 1)\,dx \)
各項に積分公式を適用します。
\[ \int 4x^3\,dx = x^4,\quad \int -2x\,dx = -x^2,\quad \int 1\,dx = x \]
よって答えは、\[ x^4 – x^2 + x + C \]
例2: \( \int \frac{2x}{x^2 + 1}\,dx \)
分母の微分が分子になっているため、\[ \int \frac{2x}{x^2 + 1}\,dx = \ln|x^2 + 1| + C = \ln(x^2 + 1) + C \]
関数の種類ごとの積分法
さまざまな関数に対して不定積分の計算方法が異なります。
多項式関数
前述のように、各項ごとに積分公式を適用します。
三角関数
基本三角関数の積分に加え、積の形になった場合は変形が必要です。
例: \[ \int \sin^2 x\,dx = \int \frac{1 – \cos 2x}{2}\,dx = \frac{x}{2} – \frac{\sin 2x}{4} + C \]
指数関数・対数関数
指数関数 \( e^x \)、対数関数 \( \ln x \) の積分はそれぞれシンプルですが、置換を要することもあります。
置換積分と部分積分の基本
置換積分
変数変換を使って簡単な形に帰着させる方法です。
例: \( \int x\sqrt{x^2 + 1}\,dx \)
\( u = x^2 + 1 \Rightarrow du = 2x\,dx \) より、\[ \int x\sqrt{x^2 + 1}\,dx = \frac{1}{2} \int \sqrt{u}\,du = \frac{1}{2} \cdot \frac{2}{3}u^{3/2} + C = \frac{1}{3}(x^2 + 1)^{3/2} + C \]
部分積分
積の微分の逆操作で、次の公式を使います:
\[ \int u\,dv = uv – \int v\,du \]
例: \( \int x e^x\,dx \)
\( u = x,\ dv = e^x\,dx \Rightarrow du = dx,\ v = e^x \) として、\[ \int x e^x\,dx = x e^x – \int e^x\,dx = x e^x – e^x + C \]
原始関数が重要な理由
原始関数を知ることで、定積分の計算が可能になります。実際、定積分は原始関数を使って以下のように求められます。
\[ \int_a^b f(x)\,dx = F(b) – F(a) \]
この公式は「ニュートン=ライプニッツの定理」と呼ばれ、解析学の根幹をなす重要な結果です。関数の面積計算や物理学における運動量・エネルギーの評価など、さまざまな場面で利用されます。