行列を使って連立一次方程式を解く方法
連立一次方程式は、行列を使うことで効率よく、かつスッキリと解くことができます。このページでは、行列を用いた解法を基礎から応用まで丁寧に解説します。
目次
連立一次方程式とは
連立一次方程式とは、複数の一次方程式を同時に満たす変数の値を求める問題です。たとえば、次のような2つの方程式からなる連立方程式を考えます:
\\[ \begin{cases} 2x + 3y = 8 \\\\ -x + 4y = 1 \end{cases} \\]
このように、未知数(この場合は \(x\) と \(y\))が複数の式に現れる場合、それらを同時に解く必要があります。
行列による表現方法
連立一次方程式は、次のように行列の形で表現できます。
一般に、次の形の方程式を
\\[ a_{11}x_1 + a_{12}x_2 + \dots + a_{1n}x_n = b_1 \\ a_{21}x_1 + a_{22}x_2 + \dots + a_{2n}x_n = b_2 \\ \vdots \\ a_{m1}x_1 + a_{m2}x_2 + \dots + a_{mn}x_n = b_m \\]
次のように行列表記できます:
\\[ A\mathbf{x} = \mathbf{b} \\]
ここで、
\\[ A = \begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} & \dots & a_{1n} \\\\ a_{21} & a_{22} & \dots & a_{2n} \\\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\\\ a_{m1} & a_{m2} & \dots & a_{mn} \end{bmatrix},\quad \mathbf{x} = \begin{bmatrix} x_1 \\\\ x_2 \\\\ \vdots \\\\ x_n \end{bmatrix},\quad \mathbf{b} = \begin{bmatrix} b_1 \\\\ b_2 \\\\ \vdots \\\\ b_m \end{bmatrix} \\]
逆行列を使った解法
もし係数行列 \(A\) が正方行列で、かつ逆行列 \(A^{-1}\) が存在する場合、次のようにして解が求まります:
\\[ \mathbf{x} = A^{-1} \mathbf{b} \\]
例:
\\[ \begin{bmatrix} 2 & 3 \\\\ -1 & 4 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x \\\\ y \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 8 \\\\ 1 \end{bmatrix} \\]
逆行列を求めてから掛け算をすることで、\(x\) と \(y\) の値を求めることができます。
掃き出し法(ガウスの消去法)による解法
逆行列が使えない場合や、手計算で解きたいときには「掃き出し法」が便利です。これは、拡大係数行列を行基本変形によって簡約化し、解を求める方法です。
例:
拡大係数行列:
\\[ \left[ \begin{array}{cc|c} 2 & 3 & 8 \\\\ -1 & 4 & 1 \end{array} \right] \\]
行の変形を繰り返して、右側が解になるように変形します。
クラメルの公式による解法
行列 \(A\) の行列式(determinant)が 0 でない場合、クラメルの公式でも解けます。
\\[ x_i = \frac{\det(A_i)}{\det(A)} \\]
ここで \(A_i\) は、行列 \(A\) の第 \(i\) 列をベクトル \(\mathbf{b}\) に置き換えた行列です。
この方法は計算量が多くなるため、小規模な問題向きです。
練習問題とその解答
問題:
\\[ \begin{cases} x + 2y + z = 4 \\\\ 2x – y + 3z = 1 \\\\ 3x + y + 2z = 7 \end{cases} \\]
解答:
行列表記:
\\[ A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 1 \\\\ 2 & -1 & 3 \\\\ 3 & 1 & 2 \end{bmatrix},\quad \mathbf{b} = \begin{bmatrix} 4 \\\\ 1 \\\\ 7 \end{bmatrix} \\]
掃き出し法または逆行列を用いて解を求めると:
\\[ \begin{bmatrix} x \\\\ y \\\\ z \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 1 \\\\ 0 \\\\ 2 \end{bmatrix} \\]
まとめ
- 連立一次方程式は、行列を使うことで効率的に解ける。
- 逆行列を使う方法、掃き出し法、クラメルの公式など、目的に応じて使い分ける。
- 行列の考え方は、線形代数だけでなく、物理や経済学、コンピュータ科学でも重要。
ぜひ自分の手で計算して、行列による解法に慣れていきましょう。