余剰類と剰余群を完全理解!初学者のための群の新しい見方

余剰類と剰余群を完全理解!初学者のための群の新しい見方

余剰類と剰余群を完全理解!初学者のための群の新しい見方

目次

はじめに

群論において、「剰余群(商群)」は、ある群を部分群によって“割る”という考え方から生まれます。これは、集合をいくつかのグループに分類して、それらの分類自体を新たな構造として扱うアイデアに基づいています。

このページでは、余剰類の概念から始まり、剰余群の定義、さらには具体例まで丁寧に解説していきます。

余剰類とは何か

まず、群 \( G \) とその部分群 \( H \) を考えます。任意の元 \( g \in G \) に対して、以下のような集合を定義します:

左剰余類:\\[ gH = \{ gh \mid h \in H \} \\]
右剰余類:\\[ Hg = \{ hg \mid h \in H \} \\]

これは、ある元 \( g \) を使って部分群 \( H \) のすべての元を「平行移動」させたようなものです。

直感的なイメージ

余剰類は、部分群を「コピーして移動させたもの」と考えると分かりやすいです。元 \( g \) によって、\( H \) を新しい位置にスライドさせた結果が \( gH \) です。

群 \( G = \mathbb{Z} \)、部分群 \( H = 3\mathbb{Z} \)(3の倍数全体)を考えます。このとき、

  • \( 0 + H = \{ \ldots, -6, -3, 0, 3, 6, \ldots \} \)
  • \( 1 + H = \{ \ldots, -5, -2, 1, 4, 7, \ldots \} \)
  • \( 2 + H = \{ \ldots, -4, -1, 2, 5, 8, \ldots \} \)

これは \( \mathbb{Z} \) を3つのグループに分けていることを意味します。

左剰余類と右剰余類

一般には、左剰余類 \( gH \) と右剰余類 \( Hg \) は異なる可能性があります。ただし、\( G \) が可換群である場合、両者は常に一致します。

部分群 \( H \) が正規部分群(正規群)であるとき、すべての左剰余類と右剰余類は一致し、このときのみ剰余群が定義できます。

剰余群とは

\( H \) を \( G \) の正規部分群とすると、すべての左剰余類の集合を使って新たな群を作ることができます。これが「剰余群(または商群)」です。記号では次のように表されます:

\\[ G / H = \{ gH \mid g \in G \} \\]

この新しい群の演算は、以下のように定義されます:

\\[ (g_1H)(g_2H) = (g_1g_2)H \\]

この演算がうまく定義されるためには、\( H \) が正規部分群である必要があります。

群準同型の核との関係

群準同型 \( \phi: G \to K \) に対し、その核 \( \ker(\phi) \) は常に正規部分群であり、剰余群 \( G / \ker(\phi) \) は準同型の像と同型になります(第一同型定理)。

剰余群の具体例

整数の剰余群

\( \mathbb{Z} \) とその部分群 \( n\mathbb{Z} \) を考えます。このとき、剰余群 \( \mathbb{Z} / n\mathbb{Z} \) は、mod \( n \) による合同類の集合と一致します:

\\[ \mathbb{Z} / n\mathbb{Z} \cong \{ [0], [1], \ldots, [n-1] \} \\]

これは、私たちが日常的に使っている「mod \( n \) 計算」と同じです。

対称群における例

\( S_3 \)(3つの元の順列全体の群)には、次のような正規部分群があります:

交代群 \( A_3 \)(偶置換のみからなる群)は \( S_3 \) の正規部分群です。これにより、剰余群 \( S_3 / A_3 \) は2つの剰余類を持ち、群の構造としては \( \mathbb{Z}_2 \) に同型です。

行列群の例

行列群 \( GL(n, \mathbb{R}) \) の中には、行列式が1の行列全体からなる正規部分群 \( SL(n, \mathbb{R}) \) があります。このとき、剰余群 \( GL(n, \mathbb{R}) / SL(n, \mathbb{R}) \) は、行列の「スケール因子」に対応します。

まとめ

  • 余剰類とは、群の部分群を使って元を分類する方法である。
  • 左剰余類と右剰余類は、部分群が正規なときに一致する。
  • 正規部分群を用いることで、剰余群という新たな群を構成できる。
  • 剰余群は、合同類や偶置換の分類など、様々な文脈で現れる。
コメントは受け付けていません。