スパン(Span)とは【具体例つき】

スパン(Span)とは【具体例つき】

スパン(Span)の概念と具体例

スパンの定義

ベクトル空間 \( V \) 上で、部分集合 \( S \subset V \) に対して、スパン(span)とは、\( S \) の要素の線形結合によって構成される集合を指します。

具体的には、次のように定義されます:

\[ \text{span}(S) = \left\{ \sum_{i=1}^n a_i \boldsymbol{v}_i \;\middle|\; \boldsymbol{v}_i \in S,\, a_i \in K,\, n \in \mathbb{N} \right\} \]

ここで、\( K \) はスカラーの体(例えば実数体 \( \mathbb{R} \))、\( \boldsymbol{v}_i \) は \( S \) の要素、\( a_i \) はスカラーです。

スパンの性質

  • \( S \subset \text{span}(S) \) が成り立ちます。
  • \( \text{span}(S) \) は \( V \) の部分空間です。
  • \( \text{span}(S) \) は \( S \) を含む最小の部分空間です。

具体例

例1:3次元実ベクトル空間

3次元実ベクトル空間 \( \mathbb{R}^3 \) を考えます。

ベクトル \( \boldsymbol{v}_1 = (1, 0, 0) \)、\( \boldsymbol{v}_2 = (1, 1, 0) \) を定義します。

このとき、

  • \( \text{span}\{\boldsymbol{v}_1\} = \{ (x, 0, 0) \mid x \in \mathbb{R} \} \) は x軸上の直線です。
  • \( \text{span}\{\boldsymbol{v}_2\} = \{ (x, x, 0) \mid x \in \mathbb{R} \} \) は x = y の直線です。
  • \( \text{span}\{\boldsymbol{v}_1, \boldsymbol{v}_2\} = \{ (x, y, 0) \mid x, y \in \mathbb{R} \} \) は xy平面です。

例2:無限次元ベクトル空間

実数列全体の集合を考えます。

標準基底ベクトルを次のように定義します:

  • \( \boldsymbol{e}_1 = (1, 0, 0, \dots) \)
  • \( \boldsymbol{e}_2 = (0, 1, 0, \dots) \)

このとき、

  • \( \text{span}\{\boldsymbol{e}_1, \dots, \boldsymbol{e}_n\} = \{ (x_1, \dots, x_n, 0, 0, \dots) \mid x_i \in \mathbb{R} \} \) は有限次元の部分空間です。
  • \( \text{span}\{\boldsymbol{e}_1, \boldsymbol{e}_2, \dots\} \) は有限個の非ゼロ成分を持つ実数列全体の集合です。

注意点

無限集合 \( S \) のスパンを考える場合、線形結合は常に有限個の要素に対して行われます。したがって、無限個の非ゼロ成分を持つベクトルはスパンに含まれません。

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