経済学で学ぶ!投票のパラドックスとは?高校生にもわかる徹底解説

経済学で学ぶ!投票のパラドックスとは?高校生にもわかる徹底解説

選挙でみんなが公平に意見を出したはずなのに、なぜか「みんなの意見がまとまらない」ことがある——。そんな不思議な現象「投票のパラドックス」について、今回は高校生にもわかるように解説していきます。

目次

投票のパラドックスとは?

「投票のパラドックス」は、選挙や意思決定の場面で、多数決で決めた結果が一貫しない、あるいは直感に反する場合に発生します。

これは、集団の選好が循環してしまうことによって起こります。つまり、AよりBを好み、BよりCを好むのに、なぜかCよりAを好む、というようなケースです。

基本的な例題で理解しよう

具体的な例を見てみましょう。次のように3人の有権者が3つの候補(A, B, C)について順位をつけたとします:

有権者1位2位3位
有権者1ABC
有権者2BCA
有権者3CAB

このとき、ペアごとに多数決をしてみましょう:

  • A vs B: 有権者1と3がAを上にしている → Aの勝ち
  • B vs C: 有権者1と2がBを上にしている → Bの勝ち
  • C vs A: 有権者2と3がCを上にしている → Cの勝ち

結果として、次のような循環が起こります:

AがBに勝ち、BがCに勝ち、CがAに勝つ ⇒ 循環してしまい、1位が決まらない

応用:経済学での活用

このパラドックスは、単なる数学の面白い話ではありません。経済学では、個人の選好が市場や政府の意思決定にどう影響するかを考える「社会的選択理論(Social Choice Theory)」の中核に位置しています。

ノーベル経済学賞を受賞したケネス・アローは、この問題をさらに発展させ、有名な「アローの不可能性定理」を提示しました。これは、以下の条件をすべて満たす「完璧な投票制度」は存在しないことを証明したものです:

  1. すべての人の意見を反映(個人の選好の尊重)
  2. 社会全体の選好が一貫する
  3. 他の選択肢に影響されない(独立性)

経済政策の評価や公共財の配分を考えるとき、投票のパラドックスが大きな影響を与えることがあります。たとえば、どの政策を導入すべきか、多数決で決めようとしても、意見の循環が起これば、正解が見つからないのです。

数式で見る投票のパラドックス

より数学的に整理してみましょう。候補 \( A, B, C \) とし、それぞれの有権者 \( i \) が選好関係 \( \succ_i \) を持っているとします。

例えば:

  • 有権者1:\( A \succ_1 B \succ_1 C \)
  • 有権者2:\( B \succ_2 C \succ_2 A \)
  • 有権者3:\( C \succ_3 A \succ_3 B \)

ここで、社会的選好 \( \succ \) を次のように定義します:

\[ A \succ B \iff \text{多数の有権者が } A \succ_i B \]

これに従って多数決をすると:

  • \( A \succ B \)
  • \( B \succ C \)
  • \( C \succ A \)

このように、数学的にも選好が非推移的になる(推移律を満たさない)ため、社会全体の意見が矛盾してしまいます。

まとめと学びのポイント

投票のパラドックスは、「みんなの意見を聞くことが正しい結果につながる」とは限らないことを示しています。これは数学だけでなく、経済学、政治学、倫理学など多くの分野に応用される深い問題です。

高校生の皆さんにとっても、「民主的な決定」と「最適な決定」が常に一致するとは限らないということを知るきっかけになります。もしこの問題に興味を持ったら、社会的選択理論やゲーム理論の勉強を始めてみるのもおすすめです!

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