高校数学でマスター!累乗平均の不等式の完全ガイド
このページでは、累乗平均の不等式(Power Mean Inequality)について、高校生向けに丁寧に解説します。定義や性質、基本的な例題から応用問題まで、豊富な例とともに学びましょう。
目次
累乗平均とは?
まず「平均」には様々な種類があります。算術平均(普通の平均)、幾何平均、調和平均などがよく知られていますが、これらはすべて「累乗平均(べき平均)」の特別なケースです。
一般に、正の実数 \( a_1, a_2, \dots, a_n \) に対して、実数 \( r \neq 0 \) に対する「r乗平均」は次のように定義されます:
\[ M_r = \left( \frac{1}{n} \sum_{i=1}^n a_i^r \right)^{1/r} \]また、\( r = 0 \) のときは極限をとって幾何平均と定義されます:
この定義により、次のような関係があります:
- \( r = 1 \):算術平均
- \( r = 0 \):幾何平均
- \( r = -1 \):調和平均
累乗平均の不等式とは?
「累乗平均の不等式」とは、次のような性質です:
累乗平均の不等式:
\[ r < s \Rightarrow M_r \leq M_s \]つまり、累乗平均は \( r \) が大きくなるにつれて大きくなるという性質があります。
特に、次のような順序が成り立ちます:
\[ M_{-1} \leq M_0 \leq M_1 \leq M_2 \leq \dots \]この不等式は、さまざまな数学的・物理的応用があります。特に、最小値・最大値の評価、近似値の比較、極限の議論などに使われます。
不等式の意味と証明のアイデア
証明は大学数学の知識が必要になる部分もありますが、アイデアはシンプルです。代表的な証明方法は以下の通りです:
- ヤンセンの不等式:凸関数の性質を利用して証明。
- 微分による比較:平均の導関数を比較する方法。
- 対数をとって変形:幾何平均などを扱うときに有効。
例えば、2つの正の数 \( a, b \) に対して、次のような不等式が成り立ちます:
これは幾何平均と算術平均の関係(\( M_0 \leq M_1 \))の特別な例です。
基本的な例題
例題1:基本的な比較
次の不等式を証明せよ:
\[ \sqrt{\frac{a^2 + b^2}{2}} \geq \frac{a + b}{2} \]解説:
- 左辺は2乗平均(\( M_2 \))、右辺は算術平均(\( M_1 \))です。
- 累乗平均の不等式 \( M_2 \geq M_1 \) によって、この不等式は常に成り立ちます。
例題2:幾何平均と算術平均の比較
\( a, b > 0 \) のとき、次の不等式を示せ:
\[ \sqrt{ab} \leq \frac{a + b}{2} \]解説:
これは \( M_0 \leq M_1 \) の2変数版です。等号成立は \( a = b \) のとき。
例題3:3つ以上の数での比較
正の数 \( a, b, c \) に対して次を示せ:
\[ \left( \frac{a^2 + b^2 + c^2}{3} \right)^{1/2} \geq \frac{a + b + c}{3} \]これは3変数版の \( M_2 \geq M_1 \) です。
応用問題と入試対策
応用1:最大値・最小値の評価
関数の最大・最小を評価する際に、累乗平均の不等式が使われることがあります。
例えば、次のような問題:
正の実数 \( x, y \) に対して、
\[ x + \frac{1}{x} \geq 2 \]これは \( M_1 \geq M_{-1} \) を使った評価と見ることもできます。
応用2:極限の評価
数列や関数の極限において、平均の性質を利用して評価する問題があります。特に、数列の収束先を累乗平均を使って比較する手法は頻出です。
応用3:入試問題
大学入試では、幾何平均と算術平均の不等式(AM≧GM)を変形して使う問題がよく出題されます。これを累乗平均の不等式の視点で見ると、より深い理解が得られます。
まとめ
- 累乗平均 \( M_r \) は、さまざまな平均の統一的な枠組み。
- 累乗平均の不等式 \( M_r \leq M_s \ (r < s) \) は、平均の大小関係を示す基本定理。
- 幾何平均と算術平均、2乗平均の関係など、よく出る不等式はすべてこの理論に含まれる。
- 入試にも頻出。極限や最大・最小問題に応用できる。
これを機に、平均の考え方をもう一段深く理解して、応用力を身につけましょう!