【高校生向け】厚生経済学の第2定理とは?図と例題で完全理解!
目次
厚生経済学の基本とは?
厚生経済学とは、「社会全体としての幸福(厚生)」をどうすれば高められるかを分析する経済学の一分野です。特に、 資源配分が効率的かつ公平であるかに注目します。厚生経済学の中心的な概念には、以下のようなものがあります:
- 効率性(パレート効率性):誰かの厚生を損なわずに、他の人の厚生を改善できない状態。
- 公平性:人々の厚生が偏っていない、または望ましい分配になっている状態。
これらの考え方をもとに、厚生経済学は「社会にとって良い資源配分とは何か」を理論的に探ります。
厚生経済学の第1定理と第2定理の違い
厚生経済学には二つの主要な定理があります。第1定理と第2定理は一見似ていますが、重要な違いがあります。
第1定理:市場の効率性
「すべての市場が完全競争で機能していれば、市場均衡はパレート効率的である」というのが第1定理です。
つまり、市場に任せれば効率的な資源配分が自然と達成されるという意味です。
第2定理:公平性の実現可能性
「どのようなパレート効率的な配分も、適切な初期分配をすれば市場によって達成できる」というのが第2定理です。
\[ \text{任意のパレート最適配分} \Rightarrow \text{初期分配の変更} + \text{市場} \Rightarrow \text{実現可能} \]これは、「公平性」を政策によって確保しつつ、「効率性」は市場に任せることができる、という理論的な裏付けになります。
厚生経済学の第2定理の内容
厚生経済学の第2定理は、次のように表されます:
「すべての消費者と生産者の効用関数と生産関数が連続かつ凸である場合、任意のパレート効率的な資源配分は、ある価格体系と初期保有の再配分によって、一般均衡として実現できる。」
重要な前提条件は以下の通りです:
- 完全競争市場である
- すべての関数が凸である(好みや技術に「スケールメリット」が極端にない)
- 外部性や情報の非対称が存在しない
この定理は、政策で公平な初期分配を行ったうえで、市場の力に任せれば効率的な配分が得られることを示しています。
具体例:交換経済における第2定理
ここでは、2人の経済主体(AさんとBさん)が2つの財(財Xと財Y)を持ち、交換する状況を考えます。
初期分配の変更と効率的配分
例えば、Aさんが財Xを多く、Bさんが財Yを多く持っていたとしましょう。このままでは不公平かもしれません。政府が一部の財を再分配して、次のような初期配分に変更したとします。
その結果、交換が行われ、市場は次の効率的な点に到達しました:
\[ \text{再分配された初期保有} \xrightarrow{\text{市場}} \text{効率的な交換結果} \]つまり、第2定理が示すのは「公平な出発点さえ用意すれば、市場に任せてよい」ということです。
エッジワース・ボックスによる図示
エッジワース・ボックスという図を使えば、厚生経済学の定理はより視覚的に理解できます。第2定理は、効率的な配分(契約曲線上の点)が初期保有の調整によって市場均衡として実現されることを示します。
第2定理の応用と限界
応用
- ベーシックインカムや再分配政策の正当化
- 税制や社会保障制度設計の理論的根拠
- 経済の自由と公平の両立を可能にする指針
限界
- 現実には完全競争市場は存在しない
- 再分配政策に対する政治的・社会的抵抗
- 外部性や情報の非対称性があると成り立たない
第2定理は理想的な条件下での理論なので、現実ではそのまま適用できない場合もあります。
まとめ
厚生経済学の第2定理は、「効率性と公平性は分離して考えられる」という強力なメッセージを私たちに与えてくれます。再分配政策で公平性を確保し、市場に効率性を任せることで、社会全体の厚生を高める理論的な基盤を築きます。
高校生の皆さんにとっては少し難しいかもしれませんが、経済のしくみを深く理解するうえで、非常に重要な考え方です。大学の経済学でも必ず登場するテーマですので、ぜひこの機会にしっかり理解しておきましょう。