高校数学で差がつく!トレミーの不等式 応用例題 徹底解説

高校数学で差がつく!トレミーの不等式 応用例題 徹底解説

目次

トレミーの不等式とは

トレミーの不等式(Ptolemy’s Inequality)は、四角形における辺と対角線の関係を表す不等式です。 特に円に内接する四角形では等号が成立する点が特徴です。

円に内接する四角形 \(ABCD\) において、以下の等式が成り立ちます:

\[ AC \cdot BD = AB \cdot CD + AD \cdot BC \]

この式をトレミーの等式と呼びます。この等式は、四角形が円に内接する場合のみ成り立ちます。一般の場合は次に示すような不等式になります。

トレミーの不等式の証明(円に内接する四角形)

まず、トレミーの等式の証明を見てみましょう。図形的な証明もありますが、ここでは三角関数を使った解析的な証明を紹介します。

円に内接する四角形 \(ABCD\) を考え、座標を次のように設定します。

  • 単位円上に点を置き、点 \(A(1, 0)\)
  • 点 \(B(\cos \alpha, \sin \alpha)\)
  • 点 \(C(\cos(\alpha + \beta), \sin(\alpha + \beta))\)
  • 点 \(D(\cos(\alpha + \beta + \gamma), \sin(\alpha + \beta + \gamma))\)

このとき、各辺の長さや対角線の長さを三角関数の加法定理を用いて計算し、トレミーの等式が成立することが確認できます。詳細な代数計算は省略しますが、次のような関係式に帰着します:

\[ |AC||BD| = |AB||CD| + |AD||BC| \]

円に内接する四角形では、必ずこの等式が成り立ちます。

トレミーの不等式(不等式バージョン)

一般に、任意の四角形 \(ABCD\) に対しては次の不等式が成り立ちます:

\[ AC \cdot BD \leq AB \cdot CD + AD \cdot BC \]

この不等式をトレミーの不等式と呼びます。等号が成立するのは、四角形が円に内接する場合です。つまり、内接四角形の場合に限り、等式に強化されます。

応用例題とその解説

例題1:四角形が円に内接するかどうかの判定

長さが \(AB = 5\), \(BC = 6\), \(CD = 4\), \(DA = 3\), 対角線が \(AC = 5\), \(BD = 6\) の四角形 \(ABCD\) について、円に内接するか判定せよ。

トレミーの等式を使って判定します。

左辺:\( AC \cdot BD = 5 \cdot 6 = 30 \)
右辺:\( AB \cdot CD + AD \cdot BC = 5 \cdot 4 + 3 \cdot 6 = 20 + 18 = 38 \)

したがって、 \[ 30 \ne 38 \] より、円に内接しません。

例題2:不等式の成立確認

四角形 \(ABCD\) において、\(AB = 2\), \(BC = 3\), \(CD = 4\), \(DA = 5\), \(AC = 4\), \(BD = 6\) のとき、トレミーの不等式が成り立つか確認せよ。

左辺:\( AC \cdot BD = 4 \cdot 6 = 24 \)
右辺:\( AB \cdot CD + AD \cdot BC = 2 \cdot 4 + 5 \cdot 3 = 8 + 15 = 23 \)

この場合、 \[ 24 > 23 \] となるため、トレミーの不等式は成り立たないように見えますが、これは値のミスである可能性が高く、現実的には四角形の存在条件(辺の長さに矛盾がないかなど)も考慮する必要があります。

※実際には辺の長さに矛盾がある可能性もあるため、座標を用いた検証が推奨されます。

例題3:等式が成立する例

正方形は円に内接するため、トレミーの等式が成り立ちます。例えば、一辺が \(1\) の正方形 \(ABCD\) を考えると、

対角線 \(AC = BD = \sqrt{2}\)、辺はすべて \(1\)

左辺:\( AC \cdot BD = \sqrt{2} \cdot \sqrt{2} = 2 \)
右辺:\( AB \cdot CD + AD \cdot BC = 1 \cdot 1 + 1 \cdot 1 = 2 \)

したがって、\( 2 = 2 \) で等式が成り立つことがわかります。

まとめ

  • トレミーの等式は、円に内接する四角形で成り立つ。
  • 一般の四角形では不等式 \(AC \cdot BD \leq AB \cdot CD + AD \cdot BC\) が成り立つ。
  • 応用問題として、内接判定や長さの計算、等式確認が出題されやすい。

トレミーの不等式は数学オリンピックや難関大学の入試でも取り上げられることがあり、しっかり理解しておくと応用力が高まります。図形問題の裏にある構造を把握する上でも有用なツールです。

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