高校生のための経済学入門:ロジットモデルと効用関数を徹底解説!
目次
はじめに
経済学では、人がどのようにして商品やサービスを選ぶかを分析するために「効用関数」や「ロジットモデル」という考え方が使われます。 これは大学の経済学や統計学でよく登場するものですが、しっかりと噛み砕いていけば、高校生でも十分理解できます。
効用関数とは?
まず「効用(こうよう)」という言葉から説明します。これは、ある商品やサービスを選んだときの「満足度」を数値化したものです。 たとえば、あなたがジュースとアイスクリームのどちらかを選べるとき、「ジュースを飲むほうが嬉しい」と思うなら、あなたにとってジュースの効用はアイスより高い、ということになります。
効用関数とは、このような満足度を表すための数学的な関数です。効用関数 \( U \) は、選択肢ごとに異なる値を持ちます。
例えば、次のように表すことができます:
- \( U_i \):選択肢 \( i \) の効用
- \( x_{ij} \):選択肢 \( i \) の特徴(例:値段、品質)
- \( \beta_j \):その特徴に対する重要度
- \( \varepsilon_i \):説明できない偶然の要因
経済学での選択モデル
人が選択をするとき、すべての選択肢に対して効用を計算し、一番効用が高いものを選ぶと仮定します。これが「離散選択モデル」と呼ばれるものです。
「離散」とは、選択肢が「コーラ」「お茶」「水」など、数えられる単位であることを意味します。連続的な量ではなく、「どれかひとつを選ぶ」ときに使われます。
ロジットモデルとは?
ロジットモデルは、離散選択モデルの中でも特に広く使われている方法です。効用に確率的な要素を加えることで、現実の選択行動に近づけます。
ロジットモデルでは、選択肢 \( i \) が選ばれる確率は、次のように計算されます:
$$ P_i = \frac{\exp(V_i)}{\sum_{j=1}^{J} \exp(V_j)} $$- \( P_i \):選択肢 \( i \) が選ばれる確率
- \( V_i \):選択肢 \( i \) の観測可能な効用(誤差項を除いた部分)
- \( J \):すべての選択肢の数
このような形を「ソフトマックス関数」とも呼びます。確率はすべて 0 以上で、合計すると 1 になるという性質を持っています。
身近な例で考えるロジットモデル
例えば、あなたが自動販売機の前に立っていて、「コーラ」「お茶」「水」から1本だけ選ぶとしましょう。あなたは以下のように感じているとします:
- コーラ:甘くて元気が出る(効用 = 3)
- お茶:さっぱりして健康的(効用 = 2)
- 水:無難だけど物足りない(効用 = 1)
でも、その日の気分や気温、あるいは気まぐれなど、予測できない要素もあるでしょう。それを誤差項として扱い、確率的にモデル化するのがロジットモデルです。
このとき、コーラを選ぶ確率は次のように求められます:
つまり、おおよそ64%の確率でコーラを選ぶと予測されます。同様に他の選択肢の確率も求められます。
ロジットモデルの数式
ロジットモデルの一般的な数式をもう一度まとめると、以下の通りです。
効用関数:
$$ U_i = V_i + \varepsilon_i $$観測可能な効用:
$$ V_i = \beta_1 x_{i1} + \beta_2 x_{i2} + \cdots + \beta_k x_{ik} $$選択確率:
$$ P_i = \frac{\exp(V_i)}{\sum_{j=1}^{J} \exp(V_j)} $$このモデルは、経済学だけでなく、マーケティングや交通行動分析など、さまざまな分野で使われています。
まとめ
- 効用関数は「満足度」を表す数式
- 人は効用が一番高い選択肢を選ぶと仮定される
- ロジットモデルは、選択行動を確率的に表す数学モデル
- 日常の意思決定にも応用できるシンプルで強力なツール
ロジットモデルは難しそうに見えますが、「人はより満足度の高いものを、ある確率で選ぶ」というシンプルな考え方から始まっています。 高校生でも基本をしっかり押さえれば、大学以降の学びに大きなアドバンテージを持てます。