逆需要関数と限界費用をゼロから解説|経済学の基礎を完全理解
目次
1. 逆需要関数とは?
需要関数とは、「価格がいくらのときに、どれくらいの商品が売れるのか」を表す関数です。 一方で、逆需要関数はその逆で、「ある数量が売れるとき、価格はいくらか」を表します。
例えば、ある飲料について次のような需要関数があるとします。
$$ Q = 100 – 2P $$
ここで \( Q \) は数量(本数など)、\( P \) は価格(円)です。 この式を価格について解き直すと、逆需要関数になります。
$$ \begin{align} Q &= 100 – 2P \\ 2P &= 100 – Q \\ P &= 50 – \frac{1}{2}Q \end{align} $$
つまり、この商品の逆需要関数は次のようになります。
$$ P = 50 – \frac{1}{2}Q $$
この式は、「売れる数量 \( Q \) が決まると、そのときにいくらで売れるか(価格 \( P \))がわかる」関数です。
2. 限界費用とは?
限界費用(Marginal Cost, MC)とは、「財を1単位追加で生産するのにかかる費用」です。 例えば、ジュースを10本作るのに100円かかり、11本作るのに110円かかるなら、11本目の費用(限界費用)は
$$ MC = 110 – 100 = 10\ \text{円} $$
となります。つまり、限界費用は次のように定義されます。
$$ MC(Q) = \frac{dC(Q)}{dQ} $$
ここで \( C(Q) \) は総費用関数です。例えば、
$$ C(Q) = 20 + 5Q $$
ならば限界費用は
$$ MC(Q) = \frac{d}{dQ}(20 + 5Q) = 5 $$
この場合、限界費用は常に5円で一定ということになります。
3. 逆需要関数と限界費用の関係
経済学では、利潤最大化の考え方が重要です。 企業は「利益(収入-費用)を最大にしたい」と考えるので、次の条件を満たす数量を選びます。
$$ MR(Q) = MC(Q) $$
ここで \( MR \) は限界収入(Marginal Revenue)で、1単位追加で売ったときに得られる追加の収入を表します。 逆需要関数が与えられたとき、限界収入は次のように求められます。
例として、逆需要関数が
$$ P(Q) = 50 – \frac{1}{2}Q $$
ならば、収入関数(総収入)は
$$ R(Q) = P(Q) \cdot Q = \left(50 – \frac{1}{2}Q\right)Q = 50Q – \frac{1}{2}Q^2 $$
これを微分して限界収入を求めます。
$$ MR(Q) = \frac{dR}{dQ} = 50 – Q $$
一方で、限界費用が一定で 10 円だとすると、
$$ MC(Q) = 10 $$
このとき、企業は
$$ MR(Q) = MC(Q) $$
すなわち、
$$ 50 – Q = 10 \Rightarrow Q = 40 $$
と求められます。このときの価格は
$$ P = 50 – \frac{1}{2} \cdot 40 = 30 $$
つまり、企業は40個を30円で販売するのが最適ということになります。
4. 実際の例で考えてみよう
あるパン屋さんが「1日に何個パンを焼けば利益が最大になるか」を考えてみましょう。
- 逆需要関数: \( P = 200 – 2Q \)
- 総費用関数: \( C(Q) = 100 + 40Q \)
まずは収入関数(売上)を求めます。
$$ R(Q) = P(Q) \cdot Q = (200 – 2Q)Q = 200Q – 2Q^2 $$
次に利潤関数を求めましょう。
$$ \pi(Q) = R(Q) – C(Q) = (200Q – 2Q^2) – (100 + 40Q) = -2Q^2 + 160Q – 100 $$
この利潤関数を最大化する \( Q \) を求めます。
$$ \frac{d\pi}{dQ} = -4Q + 160 = 0 \Rightarrow Q = 40 $$
このときの価格は
$$ P = 200 – 2 \cdot 40 = 120 $$
つまり、利益を最大化するには「1日に40個のパンを120円で売る」のがベストです。
5. 応用問題と発展的な考え方
実際の経済では、以下のような要素も考慮されます。
- 限界費用が数量によって変化する(例えば労働者が疲れて生産効率が下がる)
- 逆需要関数が時間や季節によって変化する
- 競争相手がいる市場では、企業の価格決定力が制限される
また、逆需要関数の形状から消費者余剰や社会的最適点を考えることもできます。
例えば、市場全体の福利(消費者と生産者の利益の合計)を最大にするには
$$ P = MC $$
を満たす数量が最適とされます。これが「パレート最適」とも関係する大切な概念です。
このように、逆需要関数と限界費用の理解は、経済学の基本でありながら、非常に重要な応用に繋がる土台でもあります。