高校生のための公共財と環境問題をわかりやすく解説|経済学入門

高校生のための公共財と環境問題をわかりやすく解説|経済学入門


公共財とは何か?基本の理解

公共財とは、経済学において「非排除性」と「非競合性」を持つ財のことを指します。 非排除性とは、誰かが利用しても他の人が使うのを妨げられない性質、
非競合性とは、複数の人が同時に利用しても追加コストがかからない性質を意味します。

例えば、街灯や国防が典型的な公共財です。これらは使う人を排除できず、誰が使っても他の人の利用に影響がありません。

公共財の特徴は以下の通りです:

  • 非排除性:誰も利用から除外されない。
  • 非競合性:一人が使っても他人の利用可能性が減らない。

このため、公共財は市場での供給が難しく、政府や公共機関が提供することが多いです。

環境問題と公共財の関係

環境は典型的な公共財の一種です。きれいな空気や安全な水などは、誰もが利用でき、特定の人だけを排除できません。また、一人が環境資源を利用しても、すぐに他人の利用が妨げられるわけではありません。

しかし、環境はその性質から共有資源ともいわれ、「みんなのものだからみんなで守る」という理念が必要です。もし誰も環境を大切にしなければ、空気が汚れたり、水質が悪化したりして、全員に悪影響が及びます。

環境問題は、この公共財の性質に由来する「管理の難しさ」が根本にあります。

市場の失敗と外部性の問題

市場の失敗とは、市場が効率的に資源を配分できない状態をいいます。公共財や環境問題は、この市場の失敗の代表例です。

特に外部性と呼ばれる問題が重要です。外部性とは、ある経済主体の行動が、第三者に意図せず影響を与えることを指します。外部性には正のものと負のものがありますが、環境問題はほとんどの場合負の外部性です。

例をあげると、工場が排出する汚染物質は、近隣住民の健康被害を引き起こしますが、工場の利益計算にはこれが反映されません。このため、工場は過剰に汚染を出してしまい、市場は効率的に機能しません。

このような外部性は数式で以下のように表されることがあります。

市場の効率的状態は社会的限界費用(SMC)と社会的限界便益(SMB)が一致する点ですが、負の外部性があると、企業の私的限界費用(PMC)は SMC よりも小さくなります。
すなわち、
$$ PMC < SMC $$
このため、企業は過剰に生産し、環境を悪化させます。

公共財の例と環境問題の具体例

公共財の具体例:

  • 街灯:誰でも利用可能で、誰かが使っても他の人の利用を妨げない。
  • 国防:国民全体が利益を享受し、一部の人だけが排除されることはない。
  • 自然公園の景観:美しい景色は多くの人が同時に楽しめる。

環境問題の具体例:

  • 大気汚染:工場や車の排ガスによって空気が汚れると、全員の健康が損なわれる。
  • 海洋プラスチック汚染:海に捨てられたプラスチックごみは生態系に悪影響を及ぼす。
  • 森林破壊:森の伐採は生物多様性の喪失や気候変動に繋がる。

これらの環境問題は、私的な利益追求が社会全体の利益とずれるため発生します。

解決策:政府の役割と政策手段

市場の失敗によって公共財や環境問題が解決しにくいため、政府の介入が必要です。代表的な政策手段には以下があります。

  • 規制政策:排出基準の設定や使用禁止など、環境破壊を法律で制限する。
  • 課税政策(環境税):汚染物質の排出に対して税金をかけ、企業に環境負荷を減らさせる。数学的には、外部費用を内部化し、
    $$ PMC + \text{環境税} = SMC $$
    を成立させ、効率的な生産量に誘導する。
  • 補助金・助成金:環境に優しい技術や製品を支援することで、正の外部性を促進する。
  • 公共投資:自然保護区域の整備やリサイクルインフラの整備など。
  • 国際協力:環境問題は国境を超えるため、各国が協力して解決策を模索する。

これらを組み合わせることで、持続可能な社会をめざすことが可能です。

まとめ:持続可能な社会をめざして

公共財としての環境は、私たち全員が公平に利用できる大切な資源です。しかし、経済活動が環境に与える負の外部性によって、市場だけでは十分に保護できません。政府や社会全体の協力が不可欠です。

高校生の皆さんがこれらの仕組みを理解することは、将来の社会や環境を守るためにとても重要です。持続可能な社会をつくるために、環境問題を経済学の視点からも考えてみましょう。

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