なぜ携帯会社は少数?経済学で読み解く寡占の仕組み

なぜ携帯会社は少数?経済学で読み解く寡占の仕組み

目次

はじめに:なぜ携帯会社は3~4社しかないの?

日本の携帯電話会社といえば、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が主なプレイヤーです。 高校生の皆さんも、「なんでこんなに会社が少ないの?」と思ったことがあるかもしれません。 これは「寡占(かせん)」という市場構造が原因です。 この記事では、寡占とは何か、なぜ起こるのか、そして携帯業界においてどうして寡占が成立しているのかを、経済学の視点からわかりやすく解説します。

寡占とは何か?

「寡占」とは、少数の企業が市場を支配している状態をいいます。英語では「Oligopoly(オリゴポリー)」といいます。 市場に参加する企業の数が非常に少ないため、それぞれの企業の行動が互いに強く影響し合います。

市場構造は主に以下の4つに分類されます:

  • 完全競争市場(多数の企業、自由な参入)
  • 独占的競争市場(多くの企業、製品に差別化あり)
  • 寡占市場(少数の企業、互いに影響)
  • 独占市場(1社のみが支配)

寡占市場では、価格設定や新サービスの導入などで企業同士が「出方を見ながら」行動します。これを「戦略的行動」と呼びます。 例えば、ある企業が価格を下げると、他の企業も価格を下げざるを得なくなることがあります。

なぜ寡占が起こるのか?

寡占が成立する主な理由を経済学的に見てみましょう。

1. 規模の経済

携帯会社のようなインフラ産業では、設備投資に莫大なお金がかかります。 基地局の設置、通信網の構築、ソフトウェアの整備などです。 このような固定費が非常に大きい業界では、たくさんの顧客を獲得して単価を下げることでコストを下げられます。これを「規模の経済」といいます。

たとえば、ある携帯会社の費用が以下のように表されるとします:

\\[ C(q) = F + c \cdot q \\]

ここで、\\( F \\)は固定費、\\( c \\)は単位当たりの可変費用、\\( q \\)は提供する通信サービスの数です。 \\( F \\)が非常に大きければ、\\( q \\)が大きい企業ほど平均費用が下がります:

\\[ AC(q) = \frac{C(q)}{q} = \frac{F}{q} + c \\]

このため、大企業ほど有利になり、新規参入が難しくなります。

2. 参入障壁の存在

新しく携帯会社を始めようとすると、多くのハードルがあります。

  • 電波の割り当て(総務省の許可が必要)
  • 全国に通信設備を整備する初期投資
  • 顧客を集めるための広告や割引コスト

これらの要因が「参入障壁」となり、結果的に市場に参加できる企業が限られてきます。

3. ネットワーク外部性

携帯電話サービスでは「他の人も同じ会社を使っている方が便利」という効果があります。 たとえば、同じキャリア同士だと通話料が安いプランがあるなどです。 こうした「ネットワーク外部性」は大手企業をより有利にし、中小企業には不利に働きます。

携帯業界が寡占になる理由

日本の携帯業界が寡占になる背景には、以下の特徴があります。

  • 国家の関与: 電波の使用には国の認可が必要。簡単には新規参入できません。
  • 高い初期投資: 通信設備の整備、全国展開には莫大なコストがかかる。
  • ブランド力: 長年使っているユーザーの安心感。CMやサービスで信頼を獲得。
  • 長期契約の仕組み: 2年契約などが乗り換えを難しくする。

こうした理由から、少数の大企業だけが生き残り、寡占市場が形成されているのです。

寡占の影響とは?

1. 価格が高止まりしやすい

寡占市場では、企業が競争を避けて価格を高く維持しやすくなります。これは「価格の硬直性(price rigidity)」と呼ばれます。 例えば、A社が価格を下げると、他社も追随して利益が減るため、あえて価格を下げないことが多いのです。

2. 非価格競争が活発になる

代わりに、サービスの質やCM、ポイント制度などで差別化を図ります。これを「非価格競争」といいます。

3. 政府の介入が起こりやすい

寡占市場は消費者に不利益を与えることがあるため、政府が価格の引き下げを要請したり、MVNO(仮想移動体通信事業者)を促進する政策をとることもあります。

まとめ:寡占市場とどう付き合うか

携帯会社の数が少ないのは、単なる偶然ではなく、経済学的な要因が複雑に絡み合った結果です。

寡占市場にはデメリットもありますが、企業の安定や大規模な投資による利便性の向上など、一定のメリットも存在します。

私たち消費者としては、MVNOのような選択肢を活用したり、契約内容を見直したりすることで、より良いサービスを選ぶことが可能です。

経済学を知ることで、身の回りの社会現象がより深く理解できるようになります。

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