【経済学入門】生産の外部性とは?わかりやすく徹底解説!

【経済学入門】生産の外部性とは?わかりやすく徹底解説!

目次

生産の外部性とは何か?

生産の外部性とは、ある企業や個人がモノやサービスを生産する際に、その行為が第三者に対して利益や不利益をもたらすが、その影響が市場を通じて取引されず、価格に反映されないことを指します。

外部性には2つのタイプがあります。

  • 負の外部性(ネガティブな外部性):第三者に不利益を与える。
  • 正の外部性(ポジティブな外部性):第三者に利益を与える。

外部性の具体例

負の外部性の例

  • 工場の煙:ある工場が商品を生産する過程で煙を出すと、その周辺住民は健康被害や空気の悪化に苦しむ可能性があります。しかし、その被害は市場で価格としてやりとりされないため、工場はその「コスト」を負担しません。
  • 水質汚染:製紙会社が川に排水を流すと、下流の漁師が魚を捕れなくなるなどの被害を受けることがあります。

正の外部性の例

  • ミツバチの養蜂:蜂蜜を作るためにミツバチを育てている農家があると、周囲の果樹園で自然に受粉が進み、果物の収穫量が増える可能性があります。
  • 森林保全:山林を保全していると、周辺地域に水資源や災害抑止といった恩恵をもたらす場合があります。

外部性が引き起こす問題

外部性が存在すると、市場は効率的に資源を配分できなくなり、市場の失敗が生じます。

たとえば、負の外部性がある場合、生産者は社会全体にかかるコストを考慮しないため、社会的に望ましい水準よりも過剰に生産してしまいます。

外部性の経済学的分析(数式)

ここでは、経済学のモデルを使って、生産の外部性がどのように市場の失敗を引き起こすかを見ていきましょう。

基本的な設定

企業が生産する財の生産量を \( q \)、生産にかかる私的費用を \( C(q) \)、市場価格を \( P \) とします。

企業の利潤(利益)は次のように表されます。

$$ \pi(q) = P \cdot q – C(q) $$

ここに、1単位生産あたり \( D(q) \) という第三者への損害(負の外部性)を考えると、社会的費用は以下のようになります。

$$ SC(q) = C(q) + D(q) $$

社会全体として望ましいのは、社会的限界費用(Social Marginal Cost, SMC)と市場価格が一致する点です。すなわち、

$$ SMC(q) = \frac{dC(q)}{dq} + \frac{dD(q)}{dq} = P $$

しかし、企業は通常、自分のコスト \( C(q) \) のみを考慮しており、

$$ \frac{dC(q)}{dq} = P $$

の条件で生産を行うため、社会的に望ましい水準よりも多く生産してしまいます。

外部性への政策対応

1. ピグー税(課税)

負の外部性がある場合、その影響に見合った税を課すことで、生産者に社会的コストを内部化させる方法です。たとえば、1単位あたりの外部費用が \( t \) なら、次のように課税します。

$$ P = \frac{dC(q)}{dq} + t $$

このとき、企業は生産量を抑え、社会的に適正な水準へと近づきます。

2. 補助金

正の外部性がある場合、外部的利益をもたらす行為に対して補助金を出すことで、その行為を促進します。例えば、環境保全活動や再生可能エネルギーの導入などです。

3. 規制(数量制限・基準設定)

法的に排出量の上限を設けたり、フィルターの設置を義務づけることで外部性の発生を防ぎます。

4. 排出権取引

排出できる総量に上限(キャップ)を設け、それを市場で取引できるようにする制度。効率性と環境保護の両立を目指します。

まとめと重要ポイント

  • 生産の外部性とは、企業の生産活動が第三者に影響を及ぼすが、その影響が市場で反映されないこと。
  • 負の外部性の例には公害、正の外部性には養蜂などがある。
  • 外部性が存在すると、市場は効率的な資源配分ができず、政府の介入が必要になる。
  • 政策手段にはピグー税、補助金、規制、排出権取引などがある。
  • 数式を通じて、市場の失敗がどのように生じるかを理解することができる。
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