外部性って何?高校生にもわかる経済学の基本
目次
外部性とは何か?
経済学で「外部性(externality)」とは、ある人や企業の経済活動が、他の人や社会全体に意図せず影響を与えることを指します。その影響が、他人に利益をもたらす場合もあれば、損害を与える場合もあります。
外部性は「市場の失敗」の一つとされ、市場が放っておいてもうまく機能しない原因になります。
外部性の種類:正と負
外部性には主に2つの種類があります:
正の外部性(Positive Externality)
他人にとって良い影響を与える外部性です。
- 例:ある人が庭に花を植えると、通行人がきれいな景色を楽しめる。
- 例:予防接種を受けると、自分だけでなく周囲の人も病気から守られる。
負の外部性(Negative Externality)
他人にとって悪い影響を与える外部性です。
- 例:工場が煙を出すことで、周囲の住民が空気汚染に苦しむ。
- 例:大音量で音楽を流すことで、近所の人の睡眠を妨げる。
身近な外部性の例
学校の勉強
ある生徒がまじめに勉強すると、その姿が周囲にも良い影響を与え、クラス全体の学力が上がるかもしれません。これは正の外部性です。
交通渋滞
車を運転する人が増えると、道路が混雑して全体の移動時間が長くなります。これは負の外部性です。
ペットの飼育
可愛い犬を飼っていると近所の人も癒されることがありますが、吠える声がうるさいと迷惑になることもあります。これは正にも負にもなりえます。
なぜ外部性が問題になるのか
外部性が存在すると、個人や企業の判断だけでは社会全体にとって最適な行動がとられないことがあります。
- 正の外部性があると、良い行動が過少に行われる。
- 負の外部性があると、悪い行動が過剰に行われる。
たとえば、予防接種は社会全体の利益になるのに、個人にとってはコストがかかるため接種を避けがちです。 一方、工場が利益のために安価に生産しても、その煙による被害は周囲の住民が負担します。
外部性に対する政策
経済学では、外部性による問題を解決するためにいくつかの政策が提案されています。
課税と補助金
- 負の外部性には「ピグー税」と呼ばれる課税を行うことで、行動を抑制できます。
- 正の外部性には補助金を与えることで、行動を促進できます。
規制
例えば、大気汚染を防ぐために排出基準を設定するなど、政府が直接ルールを定める方法です。
コースの定理
明確な所有権と交渉の余地があれば、外部性があっても当事者同士の交渉によって効率的な解決が可能、という考え方です。
外部性の数式による表現
経済学では、外部性は効用関数や費用関数に他人の行動が入ってくることで表現されます。
効用関数での表現
例えば、個人 \( i \) の効用が次のように表される場合:
$$ U_i = U_i(x_i, x_j) $$
ここで、\( x_i \) は自分の行動、\( x_j \) は他人の行動です。自分の効用が他人の行動に依存している場合、それは外部性の存在を示します。
社会的限界費用と私的限界費用
企業の生産において、次のように表されます:
- 私的限界費用(Private Marginal Cost): \( MC_p \)
- 外部費用(External Cost): \( EC \)
- 社会的限界費用(Social Marginal Cost): \( MC_s = MC_p + EC \)
外部費用を考慮すると、社会的に最適な生産量は減ることが分かります。
まとめ
外部性は、私たちの行動が他人に与える「見えにくい影響」です。これを理解することで、なぜ環境問題や予防接種、交通渋滞が経済学のテーマになるのかが分かります。経済活動が社会全体に与える影響を考えたうえで、適切な政策が必要になるというのが、外部性という概念の核心です。
経済学は「お金の話」だけではなく、「人と社会のつながり」を深く考える学問です。外部性はその中でも特に、日常生活に密接に関わっている重要なテーマです。