マクローリン展開でわかる!三角関数の不等式を徹底解説
目次
マクローリン展開とは?
マクローリン展開とは、ある関数を \( x = 0 \) のまわりで近似するためのテイラー展開の特別な場合です。
関数 \( f(x) \) が十分滑らか(すなわち多項式のように微分可能)であるとき、次の形で近似できます:
\[ f(x) = f(0) + f'(0)x + \frac{f”(0)}{2!}x^2 + \frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3 + \cdots \]
これは \( x \) が 0 に近いときに、元の関数の代わりに多項式で計算できる便利な道具です。
三角関数のマクローリン展開
代表的な三角関数である \( \sin x \) や \( \cos x \) のマクローリン展開を見てみましょう。
sinxの展開
\[ \sin x = x – \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} – \frac{x^7}{7!} + \cdots \]
奇数次の項だけが登場し、符号が交互に変わることが特徴です。
cosxの展開
\[ \cos x = 1 – \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} – \frac{x^6}{6!} + \cdots \]
こちらは偶数次の項だけが出てきます。
基本的な不等式の導出
\( 0 < x < \frac{\pi}{2} \) における不等式
マクローリン展開の初項・二項目を使えば、近似的に大小関係が見えやすくなります。例えば、次のような不等式が有名です。
\( \sin x < x \)
\( \sin x = x – \frac{x^3}{6} + \cdots \) より、2項目以降が負なので、
\[ \sin x < x \quad (0 < x < \frac{\pi}{2}) \]
\( \sin x > x – \frac{x^3}{6} \)
逆に、3項目以降が正負交互で小さいので、
\[ \sin x > x – \frac{x^3}{6} \quad (x > 0) \]
\( \cos x < 1 \)
\[ \cos x = 1 – \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} – \cdots \] より、2項目が負なので明らかに1より小さいです(ただし \( x \ne 0 \))。
近似での評価:例として \(\sin(0.1)\)
\[ \sin(0.1) \approx 0.1 – \frac{0.1^3}{6} = 0.1 – \frac{0.001}{6} \approx 0.0983 \]
このように、簡単に近似値が得られ、実用的な数値評価にも使えます。
応用例:よく出る入試問題
問題例1:
\( 0 < x < 1 \) のとき、次の不等式を証明せよ。
\[ x – \frac{x^3}{6} < \sin x < x \]
これは前述の展開を利用するだけで証明できます。まず、テイラー展開で:
\[ \sin x = x – \frac{x^3}{6} + \frac{x^5}{120} – \cdots \]
よって右辺より小さく、左辺より大きいことがわかります。
問題例2:
\( \cos x < 1 - \frac{x^2}{2} + \frac{x^4}{24} \) を示せ(\( x > 0 \))。
これは4次までの項を使った評価です。次の項が負であるため、左辺が右辺より小さくなるのがわかります。
まとめ
マクローリン展開は、三角関数を近似するだけでなく、不等式の証明や評価にも役立ちます。高校数学では漠然と見える三角関数も、展開の視点から見ると精密な構造をもっていることが分かります。
大学以降でも解析学や物理学など多くの場面で活用されるため、早いうちに理解しておくと大きな武器になります。
特に不等式の証明は、入試にも頻出であり、「なぜそうなるか」を数式でしっかり説明できる力が求められます。ここで紹介した例や考え方をもとに、ぜひ自分でもいくつか展開や不等式を試してみてください。