log(1+x)のマクローリン展開を完全理解:定義・導出・活用まで
log(1+x)のマクローリン展開を完全理解:定義・導出・活用まで
目次
log(1+x) の基本とマクローリン展開とは
関数 \( \log(1+x) \) は、多くの場面で現れる基本的な関数の一つです。自然対数の性質を持ち、微積分の分野ではその展開式が非常に重要です。マクローリン展開とは、関数を 0 のまわりでテイラー展開した特別な場合です。
一般に、関数 \( f(x) \) のマクローリン展開は以下の形を取ります:
\[ f(x) = f(0) + f'(0)x + \frac{f”(0)}{2!}x^2 + \frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3 + \cdots \]
この形に従って、\( f(x) = \log(1+x) \) を展開していきます。
log(1+x) のマクローリン展開の導出
\( f(x) = \log(1+x) \) に対して、何回か微分して 0 における値を計算します。
- 1階導関数: \( f'(x) = \frac{1}{1+x} \Rightarrow f'(0) = 1 \)
- 2階導関数: \( f”(x) = -\frac{1}{(1+x)^2} \Rightarrow f”(0) = -1 \)
- 3階導関数: \( f^{(3)}(x) = \frac{2}{(1+x)^3} \Rightarrow f^{(3)}(0) = 2 \)
- 4階導関数: \( f^{(4)}(x) = -\frac{6}{(1+x)^4} \Rightarrow f^{(4)}(0) = -6 \)
よって、マクローリン展開は以下のようになります:
\[ \log(1+x) = x – \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{3} – \frac{x^4}{4} + \cdots = \sum_{n=1}^{\infty} (-1)^{n+1} \frac{x^n}{n} \]
この展開は \( |x| < 1 \) の範囲で収束します。
具体的な展開例と応用
例えば、次のように使うことができます。
- \( x = 0.5 \) のとき: \[ \log(1+0.5) = \log(1.5) \approx 0.5 – \frac{0.5^2}{2} + \frac{0.5^3}{3} – \frac{0.5^4}{4} + \cdots \]
- \( x = -0.5 \) のとき: \[ \log(1-0.5) = \log(0.5) \approx -0.5 – \frac{(-0.5)^2}{2} – \frac{(-0.5)^3}{3} – \cdots \]
このように、近似値を求めるために非常に便利です。
収束半径と収束範囲
上記のマクローリン展開は \( |x| < 1 \) のときに収束し、特に \( x = 1 \)(つまり \( \log(2) \))では条件収束します。
収束半径は \( R = 1 \) です。このことは比率判定法(Ratio Test)によって確認できます。
また、\( x = -1 \) のときは発散することに注意が必要です。なぜなら: \[ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}(-1)^n}{n} = -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n} \] これは発散する調和級数になります。
数学や物理での活用例
log(1+x) の展開は、次のような分野で頻繁に利用されます:
- 確率論:対数尤度関数の近似
- 情報理論:エントロピーやKLダイバージェンスの展開
- 統計学:対数線形モデルの近似
- 物理学:自由エネルギーの展開
また、数値計算において小さな値の対数を求める際にも近似式として有効です。
まとめ
\(\log(1+x)\) のマクローリン展開は、非常に基本的かつ重要な級数展開の一つです。
ポイントを再確認しましょう:
- 関数の性質:微分が簡単で交互級数になる
- 展開式: \( \sum_{n=1}^{\infty} (-1)^{n+1} \frac{x^n}{n} \)
- 収束範囲: \( |x| < 1 \)(端点は要注意)
- 実用性:数値計算、統計、物理学など多数の応用
この展開を理解することで、他の多くの数学的展開や近似手法の理解も深まります。