ラグランジュの未定乗数法とは?制約付き最適化を完全マスター

ラグランジュの未定乗数法とは?制約付き最適化を完全マスター

ラグランジュの未定乗数法とは?制約付き最適化を完全マスター

目次

ラグランジュの未定乗数法とは

ラグランジュの未定乗数法(Lagrange Multiplier Method)は、制約条件のもとで関数の極値(最大値または最小値)を求めるための数学的手法です。 経済学、物理学、工学などの分野で広く使われており、特に最適化問題において重要な役割を果たします。

基本的なアイデア

目的関数 \( f(x, y, \ldots) \) を制約条件 \( g(x, y, \ldots) = 0 \) のもとで最大化または最小化したいとします。 このとき、ラグランジュ関数

\[ \mathcal{L}(x, y, \ldots, \lambda) = f(x, y, \ldots) – \lambda g(x, y, \ldots) \]

を定義し、すべての変数とラグランジュ乗数 \( \lambda \) について偏微分して、連立方程式を解くことで解を求めます。

解法のステップ

  1. 目的関数 \( f(x, y, \ldots) \) と制約条件 \( g(x, y, \ldots) = 0 \) を確認する。
  2. ラグランジュ関数を作成する:\[ \mathcal{L} = f(x, y, \ldots) – \lambda g(x, y, \ldots) \]
  3. すべての変数と \( \lambda \) について、\( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial x} = 0, \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial y} = 0, \ldots, \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \lambda} = 0 \) を立てる。
  4. 連立方程式を解き、候補解を得る。
  5. 必要に応じて、候補解の中から最大・最小を判定する。

例題1:2変数の制約付き最大化

次の問題を考えます。

最大化する目的関数:\[ f(x, y) = xy \] 制約条件:\[ x + y = 10 \]

ラグランジュ関数は

\[ \mathcal{L}(x, y, \lambda) = xy – \lambda(x + y – 10) \]

偏微分して連立方程式を立てる:

  • \( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial x} = y – \lambda = 0 \)
  • \( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial y} = x – \lambda = 0 \)
  • \( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \lambda} = -(x + y – 10) = 0 \)

解くと:

  • \( x = y \)
  • \( x + y = 10 \Rightarrow x = y = 5 \)

したがって、最大値は \( f(5, 5) = 25 \) です。

例題2:等式制約が2つある場合

目的関数:\( f(x, y, z) = x^2 + y^2 + z^2 \)

制約条件:

  • \( x + y + z = 3 \)
  • \( x – y = 1 \)

ラグランジュ関数は:

\[ \mathcal{L}(x, y, z, \lambda, \mu) = x^2 + y^2 + z^2 – \lambda(x + y + z – 3) – \mu(x – y – 1) \]

各変数で偏微分して連立方程式を解くことで、最小値を求めることができます。

ラグランジュ乗数の意味

ラグランジュ乗数 \( \lambda \) は、制約条件が少し変化したときに目的関数がどれだけ変化するかを表します。 経済学では「影の価格(shadow price)」としても知られており、資源が1単位増えたときの効用の増加を表すなど、意味のある指標として使われます。

応用分野

  • 経済学:消費者の効用最大化、企業の費用最小化
  • 物理学:エネルギー最小化問題
  • 統計学:最尤推定や制約付き回帰
  • 工学:最適設計、機械学習の制約最適化

まとめ

ラグランジュの未定乗数法は、制約付き最適化問題を解く強力な手法です。 その理論的背景を理解することで、経済学や工学のさまざまな問題に応用することができます。 実際に例題を解くことで、その使い方や意味もより深く理解できるでしょう。

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