【保存版】整域とは?定義から具体例・性質まで完全解説!
「整域」という言葉を聞いたことはあるけど、正確にはどういう意味か分からない……。
そんな方から、改めて理論を確認したい上級者まで納得できるよう、整域について徹底的に解説します。
目次
整域の定義
整域(せいいき、integral domain)とは、以下の性質を持つ環(かん)のことを指します。
定義:
可換環 \( R \) が整域であるとは、以下の2つの条件を満たすときである。
- \( R \) は単位元 \( 1 \neq 0 \) を持つ。
- 任意の \( a, b \in R \) に対して、\( ab = 0 \) ならば、\( a = 0 \) または \( b = 0 \) が成り立つ(零因子が存在しない)。
直感的にいえば、「割り算ができるかどうか」はさておき、「掛けて0になるならどちらかが0である」という構造をもつ環です。
整域の具体例5つ
以下に整域の具体的な例を5つ紹介します。それぞれが定義を満たしていることを確認しながら学びましょう。
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整数全体の集合 \( \mathbb{Z} \):
最も基本的な整域です。可換環であり、単位元 \( 1 \) を持ち、かつ \( ab = 0 \) ならば \( a = 0 \) または \( b = 0 \) です。 -
既約多項式環 \( \mathbb{Q}[x] \):
有理数体 \( \mathbb{Q} \) 上の多項式環も整域です。2つの非ゼロ多項式の積がゼロになることはありません。 -
実数体 \( \mathbb{R} \):
体はすべて整域でもあります。したがって、\( \mathbb{R} \) や \( \mathbb{C} \)(複素数体)も整域です。 -
ガウス整数 \( \mathbb{Z}[i] \):
複素数のうち、実部・虚部がともに整数の集合。環としての構造があり、零因子を持たないため整域です。 -
剰余環 \( \mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \)(ただし \( p \) は素数):
素数 \( p \) による剰余環は体であり、したがって整域です。ただし、\( p \) が合成数のときは整域ではなくなります。
整域の基本的性質5つ
整域には、他の環にはない重要な性質がいくつかあります。ここでは代表的な性質を5つ紹介します。
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可換であり、単位元を持つ:
整域の定義に含まれる性質ですが、ここでは明示的に強調しておきます。すべての整域は可換環です。 -
零因子が存在しない:
整域の最大の特徴であり、方程式を解く上で極めて重要です。 -
約分が可能:
\( ab = ac \) かつ \( a \neq 0 \) ならば \( b = c \) が成り立ちます(整域では消去律が成り立つ)。 -
可除体への埋め込みが可能:
整域は必ずその「分数体(商体)」を構成できます。例えば、\( \mathbb{Z} \) からは \( \mathbb{Q} \) が得られます。 -
整域上の多項式環も整域:
\( R \) が整域ならば \( R[x] \) も整域です。これは帰納的に高次の多項式環に対しても成り立ちます。
補足:整域と他の環との違い
最後に、整域が他のよく似た代数的構造とどのように異なるのかを簡単にまとめておきましょう。
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整域 vs 一般の可換環:
一般の可換環には零因子がある場合があります(例:\( \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} \) では \( 2 \cdot 3 = 0 \))。 -
整域 vs 体:
体ではすべての非ゼロ元が逆元を持ちますが、整域では逆元の存在までは保証されません。 -
整域 vs 商環:
剰余環は元の環のイデアルによって整域でなくなることがあります。特に、商環が零因子を持つことに注意しましょう。
このように、整域は代数学において非常に重要な中間構造であり、体や可換環との関係性を理解することでより深く学ぶことができます。