高校生にもわかる!スルツキー分解と所得効果の完全ガイド【応用例つき】
目次
スルツキー分解とは?
スルツキー分解とは、財の価格が変化したとき、消費者の行動(消費量の変化)を「代替効果」と「所得効果」に分けて分析する手法です。
これは、価格が変わったときにどのようにして人々の選択が変わるのかを理解するために重要です。特に、ミクロ経済学の基礎的な理論として使われています。
なぜ分解するのか?
価格が下がると、当然その財を多く買うようになります。しかし、その理由は2つに分けられます。
- 代替効果:他の財よりもその財が相対的に安くなるため、それを選ぶようになる。
- 所得効果:価格が下がることで、実質的にお金に余裕ができ、たくさん買えるようになる。
この2つの効果を区別することで、「本当にその財が好きだから買っているのか?」「単に他の財より安いから買っているのか?」を見極めることができます。
スルツキー分解のしくみ
スルツキー分解では、価格変化によって消費がどのように変化するかを、次のように分けて考えます。
- まず、「価格は変わったが効用レベル(満足度)を元に戻す」ように所得を調整したときの消費の変化。これが代替効果です。
- 次に、「価格が変わったことで実際に所得が変わった(購買力が変わった)」ときの消費の変化。これが所得効果です。
このように、1つの価格変化を2つの効果に分けることが、スルツキー分解の基本的な考え方です。
数式で理解するスルツキー分解
数式で表すと、スルツキー分解は以下のように表現されます:
\[ \frac{\partial x_i}{\partial p_j} = \frac{\partial h_i}{\partial p_j} – \frac{\partial x_i}{\partial I} \cdot x_j \]ここで:
- \( x_i \):最適な消費量(効用最大化解)
- \( h_i \):補償需要関数(効用を一定に保つようにしたときの需要)
- \( p_j \):財 \( j \) の価格
- \( I \):所得
左辺は価格変化に対する需要の変化(合計効果)、右辺の第一項が代替効果、第二項が所得効果です。
例題:価格変化が消費に与える影響
設定:消費者は2つの財(X財とY財)を消費します。X財の価格が下がるとします。
ステップ1:初期状態
- 所得:1000円
- X財の価格:100円 → 80円に値下がり
- Y財の価格:50円
ステップ2:価格変化後の最適消費
価格が変化したことで、X財の消費が5個から8個に増えたとしましょう。
ステップ3:代替効果の分離
価格が変わったけれども、元の効用水準(満足度)を維持できるように、所得を少し減らしてみます(補償的変化)。このとき、X財の消費は5個から6.5個に増えたとしましょう。
ステップ4:所得効果の算出
価格が下がって実質所得が増えたので、その結果6.5個から8個に増えた分(1.5個)が所得効果です。
このように、
- 5個 → 6.5個:代替効果
- 6.5個 → 8個:所得効果
応用:グラフと直感的理解
グラフを使うと、スルツキー分解はより直感的に理解できます。以下のステップで確認します。
- 最初の予算線と無差別曲線で最適点を決定
- 価格が変化して新しい予算線に
- 同じ効用レベルを保つように仮想的な予算線を描く
- それぞれの点でのX財の消費量の違いが、代替効果と所得効果
このように、スルツキー分解は「価格変化→行動変化」のプロセスを丁寧に分けることで、消費者の意思決定の構造を明らかにしてくれるのです。
まとめ
- スルツキー分解は、価格変化による消費の変化を「代替効果」と「所得効果」に分ける手法。
- 代替効果は「相対的に安くなったから」、所得効果は「実質所得が増えたから」。
- 例題を通じて、それぞれの効果を数値で分解して確認できる。
- グラフを使えば、より直感的に理解可能。
高校生でも、このスルツキー分解の考え方を理解すれば、大学の経済学の基礎をしっかり身につけることができます。数式と図の両方を活用して、実感をもって学んでいきましょう!