【高校生向け】所得拡張経路の応用をゼロから徹底解説!
目次
- 1. 所得拡張経路とは?
- 2. 所得拡張経路の描き方と基本概念
- 3. 応用例題①:財の選好が完全代替財のとき
- 4. 応用例題②:財の選好が完全補完財のとき
- 5. 所得拡張経路から分かる経済的意味
- 6. 総まとめと練習問題
1. 所得拡張経路とは?
所得拡張経路(Income Expansion Path)とは、消費者の所得が変化したとき、価格が一定の下で、最適な消費点(効用最大化点)がどのように変化するかを表した軌跡のことです。
これはミクロ経済学の中でも特に「消費者行動」の分野で重要な概念で、予算制約線と無差別曲線の交点がどのように動くかを視覚的に理解するための道具です。
2. 所得拡張経路の描き方と基本概念
2財(たとえば財Aと財B)を消費する人を考えます。このとき、予算制約線は次のように表されます。
\[ p_A \cdot x_A + p_B \cdot x_B = I \] ここで、\(p_A\) は財Aの価格、\(p_B\) は財Bの価格、\(x_A\), \(x_B\) はそれぞれの消費量、\(I\) は所得です。
所得が増加すると、予算制約線は右上に平行移動します(価格は一定なので傾きは変わりません)。そのたびに無差別曲線と接する点が変化し、それを線でつなげたものが所得拡張経路です。
所得拡張経路が直線で原点から出ていれば、「両財とも正常財」であることを示しています。
3. 応用例題①:財の選好が完全代替財のとき
完全代替財とは、財Aと財Bが「同じ役割を果たす」ような財の組み合わせです(例:同じ性能の異なるブランドのボールペン)。
このときの無差別曲線は直線で表され、傾きは一定です。
所得拡張経路はどうなるかというと、常により安い財だけを選ぶので、予算制約線の端点を結ぶような折れ線になります。
具体例:
- 財Aの価格:\(p_A = 100\)
- 財Bの価格:\(p_B = 50\)
- 所得:\(I = 1000\)
4. 応用例題②:財の選好が完全補完財のとき
完全補完財は、一方の財だけでは効用を得られず、常に一定の割合で組み合わせて消費するような財です(例:靴の左右、プリンターとインク)。
無差別曲線はL字型で、最適点は常に「折れ目」にあります。
たとえば、1:1の割合でしか効用が得られない場合、最適な消費点は以下で決まります:
\[ x_A = x_B, \quad \text{かつ} \quad p_A \cdot x_A + p_B \cdot x_B = I \] よって、 \[ (p_A + p_B) \cdot x_A = I \Rightarrow x_A = \frac{I}{p_A + p_B},\quad x_B = x_A \]
所得が増えれば、その割合で\(x_A\), \(x_B\)も比例して増えるため、所得拡張経路は45度の直線になります。
5. 所得拡張経路から分かる経済的意味
所得拡張経路を使うことで、以下のような重要な分析が可能です:
- 消費者の選好構造を視覚的に把握できる
- 各財が「正常財」か「劣等財」かが判別できる
- 将来的な所得変化が消費に与える影響を予測できる
劣等財の場合、所得が増えると消費量が減るため、所得拡張経路が折れ曲がることもあります。
6. 総まとめと練習問題
ここまでのポイントをまとめると:
- 所得拡張経路は「所得が変わったときの最適消費点の軌跡」
- 価格が一定であることが前提
- 正常財→右上がりの直線、劣等財→折れ曲がる、完全代替→片方のみ選択、完全補完→45度直線
練習問題:
- 財Xと財Yの価格がそれぞれ\(100\)円と\(200\)円、所得が\(1,200\)円のとき、完全補完財(1:1)とすると、最適消費量はいくらか?
- 所得を\(1,800\)円にしたときの消費量を求め、所得拡張経路の変化を説明せよ。
- 財Xが劣等財であるとき、所得拡張経路はどのような形になるかグラフで描け。