高校数学|不等式の等号成立条件はいつ必要?徹底例題&応用で完全理解
不等式を使った証明問題や最大・最小の問題では、「等号成立条件を確認せよ」という指示があることがあります。一方で、特にその確認が求められない場合もあります。本記事では、高校数学の文脈で「等号成立条件」が必要なケースと不要なケースを徹底的に解説し、豊富な例題と応用問題を通して理解を深めます。
目次
1. 不等式と等号成立条件とは?
不等式とは、次のように2つの数量の大小関係を示すものです:
- \( a < b \)
- \( a \leq b \)
- \( a > b \)
- \( a \geq b \)
特に数学の問題では、次のような代表的な不等式が頻出です:
- 相加平均・相乗平均の不等式(AM-GM不等式)
- シュワルツの不等式
- 三角不等式
これらの不等式では、等号が成立する条件が明確に存在します。たとえば、AM-GM不等式では、等号が成立するのは2つの数が等しいときです:
2. 等号成立条件の確認が必要なケース
以下のような場合は等号成立条件の確認が必要です。
2-1. 最大・最小を問う問題
最大値や最小値を求める問題では、その値が実際に達成されるのか、つまり等号が成立するかの確認が必須です。
例:
正の実数 \(x\) に対して、次の式の最小値を求めよ。
\[ x + \frac{1}{x} \]AM-GMより:
\[ x + \frac{1}{x} \geq 2\sqrt{x \cdot \frac{1}{x}} = 2 \]よって最小値は 2。等号成立条件は:
\[ x = \frac{1}{x} \Rightarrow x = 1 \]2-2. 証明問題で「等号成立条件も述べよ」と書かれているとき
そのまま条件として書かれている場合は明示的に確認が必要です。
2-3. 関数の定義域で等号成立が可能かどうかを判断する必要があるとき
定義域に制限があると、等号が成立する値がその中に存在するか確認が重要になります。
3. 等号成立条件の確認が不要なケース
以下のような場合は等号成立条件の確認は不要です。
3-1. 単なる不等式の証明
与えられた不等式が常に成り立つことを示すだけなら、等号成立条件は不要です。
3-2. 「成立する条件を述べよ」と書かれていないとき
問題文にそのような指示がなければ、基本的に省略して構いません。
3-3. 不等式の導出だけが目的で、その後の応用がないとき
一つの途中式として不等式を使う場合も、成立条件までは不要です。
4. 典型的な例題
例題1:AM-GMの不等式と等号成立
正の実数 \(a, b\) に対して、次の不等式の最大値を求めよ:
\[ S = \sqrt{ab} \text{ ただし } a + b = 10 \]AM-GMより:
\[ \sqrt{ab} \leq \frac{a + b}{2} = 5 \]等号成立条件: \(a = b\) より、\(a = b = 5\)。
したがって最大値は 5。
例題2:シュワルツの不等式
実数 \(x, y\) に対して次の不等式が成り立つことを示し、等号成立条件を求めよ:
\[ (x^2 + y^2)(1^2 + 1^2) \geq (x + y)^2 \]展開して:
\[ (x^2 + y^2)(2) \geq (x + y)^2 \] \[ \Rightarrow 2x^2 + 2y^2 \geq x^2 + 2xy + y^2 \Rightarrow x^2 – 2xy + y^2 \geq 0 \Rightarrow (x – y)^2 \geq 0 \]等号成立条件: \(x = y\)
5. 応用問題での実践
応用1:文字式を含む最大値問題
実数 \(x > 0\) に対し、次の式の最小値を求めよ:
\[ f(x) = \frac{x^2 + 4}{x} \]整理すると:
\[ f(x) = x + \frac{4}{x} \]AM-GM適用:
\[ x + \frac{4}{x} \geq 2\sqrt{x \cdot \frac{4}{x}} = 2\sqrt{4} = 4 \]等号成立条件: \(x = \frac{4}{x} \Rightarrow x^2 = 4 \Rightarrow x = 2\)
最小値は 4(ただし \(x > 0\) より、2 は許される)
応用2:条件付き不等式証明
実数 \(x, y > 0\) に対し、次の不等式を示し、等号成立条件を確認せよ:
\[ x^3 + y^3 \geq xy(x + y) \]証明:
\[ x^3 + y^3 – xy(x + y) = x^3 + y^3 – x^2y – xy^2 = x^3 – x^2y + y^3 – xy^2 = x^2(x – y) + y^2(y – x) \] \[ = (x – y)(x^2 – y^2) = (x – y)^2(x + y) \geq 0 \]等号成立条件: \(x = y\)
6. まとめ
- 等号成立条件は「最大・最小の値の確認」や「問題文で指定がある場合」に必要。
- 証明のみであれば、基本的には等号成立条件は不要。
- AM-GM、シュワルツなどの不等式には、それぞれ明確な等号成立条件がある。
不等式の扱いに慣れてくると、「どこで等号成立条件が必要か」が自然に見えてきます。例題や応用問題をしっかり解いて理解を深めましょう。