ベルヌーイの不等式を完全理解|定義・証明・応用例題まで徹底解説!
目次
ベルヌーイの不等式とは?
ベルヌーイの不等式は、指数関数の初歩的な性質に関連する重要な不等式であり、次のように表されます。
実数 \( x \geq -1 \)、自然数 \( n \in \mathbb{N} \) に対して、 \[ (1 + x)^n \geq 1 + nx \] が成り立ちます。ただし、\( n = 1 \) のときは等号が成立し、それ以外は通常不等号になります。
この不等式は、指数関数の近似や、評価式に非常に役立ちます。
不等式の証明
ベルヌーイの不等式の証明には数学的帰納法を用いるのが一般的です。
【証明】
\( x \geq -1 \) とし、\( n \in \mathbb{N} \) に対して、次を示します: \[ (1 + x)^n \geq 1 + nx \]
初期値:\( n = 1 \)
左辺:\( (1 + x)^1 = 1 + x \)
右辺:\( 1 + 1 \cdot x = 1 + x \)
よって等号成立。
帰納法の仮定:
\( n = k \) のときに \[ (1 + x)^k \geq 1 + kx \] が成り立つと仮定。
帰納法のステップ:
\( n = k + 1 \) のとき:
\[
(1 + x)^{k+1} = (1 + x)^k(1 + x) \geq (1 + kx)(1 + x)
\]
展開して:
\[
(1 + kx)(1 + x) = 1 + x + kx + kx^2 = 1 + (k+1)x + kx^2
\]
\( x \geq -1 \) なので \( x^2 \geq 0 \)、したがって \( kx^2 \geq 0 \)
よって、
\[
(1 + x)^{k+1} \geq 1 + (k+1)x
\]
証明完了。
基本的な例題
例題1:
\( x = 0.1 \)、\( n = 3 \) のとき、ベルヌーイの不等式を確認してみましょう。
左辺:\( (1 + 0.1)^3 = 1.1^3 \approx 1.331 \)
右辺:\( 1 + 3 \cdot 0.1 = 1.3 \)
よって、確かに
\[
1.331 \geq 1.3
\]
成り立っています。
例題2:
\( x = -0.5 \)、\( n = 4 \) のときも確認しましょう。
左辺:\( (1 – 0.5)^4 = 0.5^4 = 0.0625 \)
右辺:\( 1 + 4 \cdot (-0.5) = 1 – 2 = -1 \)
よって、
\[
0.0625 \geq -1
\]
も成立しています。
応用例題
応用例題1:複雑な式の評価
次の式を評価せよ: \[ (1 + \frac{1}{n})^n \] この式は \( n \to \infty \) のとき、\( e \) に近づくことで知られています。ベルヌーイの不等式を使って下から評価すると: \[ (1 + \frac{1}{n})^n \geq 1 + n \cdot \frac{1}{n} = 2 \] つまり、どんな \( n \) に対してもこの式は少なくとも 2 以上であることがわかります。
応用例題2:関数の単調性を示す
関数 \( f(x) = (1 + x)^n – (1 + nx) \) が \( x \geq -1 \) で常に 0 以上であることを示すことで、単調増加性を示す問題にも応用できます。
これはベルヌーイの不等式の定義そのものであり、微分して確認しても構いません。
数学での活用例とまとめ
ベルヌーイの不等式は、次のような場面で広く活用されます:
- 指数関数の下からの評価
- 極限の下限評価
- 不等式を用いた証明問題
- 数列の評価問題(特に漸化式を用いる問題)
高校数学では入試問題にもたびたび登場します。覚えるだけでなく、「どのように使うか」を理解することで得点力が上がります。
練習問題や演習でも頻出のこの不等式を、自分の武器にしておきましょう。