【高校生向け経済学】逆選択とシグナリングを徹底解説!例題&応用で完全理解

【高校生向け経済学】逆選択とシグナリングを徹底解説!例題&応用で完全理解

経済学では「情報の非対称性」という現象がさまざまな問題を引き起こします。この記事では、その中でも特に重要な概念である「逆選択(アドバース・セレクション)」と「シグナリング(シグナル理論)」について、高校生でも理解できるように丁寧に解説します。

目次

情報の非対称性とは?

経済取引では、買い手と売り手の間で「持っている情報の量が異なる」ことがあります。これを「情報の非対称性(information asymmetry)」といいます。

たとえば、中古車を買うときに売り手はその車の状態をよく知っていますが、買い手はよくわかりません。このように、片方だけが多くの情報を持っている状態が「情報の非対称性」です。

逆選択(アドバース・セレクション)とは?

逆選択とは、情報の非対称性によって「質の悪い商品や人材だけが市場に残る」現象です。特に、買い手側が情報を持たない場合に起こりやすいです。

この現象を数式で表すと、例えば保険市場において、保険料を \( p \) とし、健康な人の事故確率を \( \alpha \)、不健康な人の事故確率を \( \beta \)(\( \alpha < \beta \))としたとき、

\[ p = \alpha x + \beta (1 – x) \]

という式で保険料が決まるとします(\( x \)は健康な人の割合)。このとき、健康な人が「損」と判断して保険に入らなければ、\( x \) が減少し、保険料 \( p \) はますます高くなり、さらに健康な人が市場から退出する……という悪循環が起こります。

逆選択の例題

例題:中古車市場の逆選択

あなたは中古車を買おうとしています。市場には「良い車(あたり)」と「悪い車(はずれ)」が半々で存在しています。売り手は車の品質を知っていますが、あなたにはわかりません。

良い車の価値は100万円、悪い車は50万円とします。あなたが平均の価値75万円を支払うとき、良い車の売り手は「損だ」と考えて市場から退出し、悪い車だけが残る可能性があります。これが「逆選択」です。

シグナリングとは?

逆選択の問題を解決する一つの方法が「シグナリング」です。これは、情報を持っている側(たとえば売り手や労働者)が、自分の「質の高さ」を何らかの方法で相手に伝える行動です。

シグナリングでは、次のような条件が必要です:

  • 質の高い人にとってシグナルを送るコストが低い
  • 質の低い人にとってはコストが高くて真似できない

数式的には、労働者が学歴 \( e \) を持つとき、企業が予測する生産性を \( y(e) \) とし、実際の生産性が高い人にとってコスト \( c_H(e) \) が低く、低い人には \( c_L(e) \) が高い、という非対称なコスト構造であればシグナリングは有効です。

シグナリングの例題

例題:就職活動におけるシグナリング

あなたは企業に就職したいと考えています。企業はあなたの本当の能力を知りません。しかし、大学の学歴やインターンの経験などは、能力の「シグナル」として使えます。

仮に「優秀な学生」にとって大学で学ぶのは簡単でも、「あまり優秀でない学生」にとってはとても難しいとすると、大学卒というシグナルは有効になります。

応用例:就職活動・保険市場・中古車市場

1. 就職活動

企業は応募者の能力を正確には測れません。そこで、大学の卒業資格や資格試験、インターン経験などを「シグナル」として使います。高い能力の人はそれを簡単に獲得できますが、そうでない人にとっては困難です。

2. 保険市場

健康な人が健康診断結果を提出することが「シグナル」になります。これにより、保険会社は事故リスクをより正確に判断でき、逆選択の問題を緩和できます。

3. 中古車市場

売り手が「整備記録」や「第三者機関の認定書」を提示することがシグナルになります。これにより、買い手は安心して購入でき、良い車の退出を防げます。

まとめ

  • 情報の非対称性は市場の失敗を引き起こす
  • 逆選択は「質の低い選択肢だけが残る」現象
  • シグナリングは「質の高い側が自らの質を示す方法」
  • 就職、保険、中古車などさまざまな場面で応用されている

高校生のうちからこのような経済学の考え方を理解しておくと、日常生活でも役立ちます。将来、大学や就職のときにもきっと強みになります。

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