微分で攻略!不等式証明の応用テクニック徹底解説【高校数学】
この記事では、高校数学において重要な「微分を用いた不等式の証明」について、基礎から応用まで徹底的に解説します。不等式の証明において、関数の増減や極値を利用するテクニックは非常に強力です。数学IIIで学ぶ微分の知識を活かして、実戦的な問題を解けるようにしていきましょう。
目次
1. 微分を用いた不等式証明の基本戦略
微分を用いた不等式の証明では、次のような戦略を取るのが一般的です。
- 不等式の形から関数 \( f(x) \) を定義する。
- その関数の増減(導関数)を調べる。
- 最大値・最小値や符号を確認し、不等式を導く。
例えば、不等式を示したいときに、左辺と右辺の差を関数として定義するのが有効です。
例:次の不等式を示す
\\[ \frac{a + b}{2} \geq \sqrt{ab} \quad (a > 0, b > 0) \\]
このとき、関数 \\( f(x) = \ln x \\) を考えて、凸関数の性質(Jensenの不等式)を用いる方法もありますが、微分を使って示す場合は次のようにします。
関数 \\( f(x) = x – \ln x \\) を考えると、\\( f”(x) = \frac{1}{x^2} > 0 \\) より凸関数であるため、\\( f(x) \\) の最小値が存在します。
こうしたアイデアを実際の例題で確認していきましょう。
2. 応用例題1:代数的不等式の証明
問題: 実数 \\( x > 0 \\) に対して次を示せ:
\\[ x + \frac{1}{x} \geq 2 \\]
解説: この不等式を証明するために、関数
\\[ f(x) = x + \frac{1}{x} \\]
を考えます。まず、\\( x > 0 \\) の範囲で微分して増減を調べます。
\\[ f'(x) = 1 – \frac{1}{x^2} \\]
\\( f'(x) = 0 \\) となるのは、\\( x = 1 \\) のときです。このとき、\\( f”(x) = \frac{2}{x^3} > 0 \\) より、\\( x = 1 \\) で極小値をとります。
したがって、最小値は \\( f(1) = 1 + 1 = 2 \\) であり、\\( x > 0 \\) の範囲で常に \\( x + \frac{1}{x} \geq 2 \\) となることがわかります。
3. 応用例題2:関数の最小値を用いた証明
問題: 実数 \\( x > 0 \\) に対して、次の不等式を証明せよ。
\\[ \ln x \leq x – 1 \\]
解説: 関数 \\( f(x) = x – 1 – \ln x \\) を定義して、\\( f(x) \geq 0 \\) を示します。
まず、\\( f(1) = 1 – 1 – \ln 1 = 0 \\)
次に微分:
\\[ f'(x) = 1 – \frac{1}{x} \\]
\\( f'(x) = 0 \\) のとき \\( x = 1 \\)。\\( f”(x) = \frac{1}{x^2} > 0 \\) より \\( x = 1 \\) で極小値。従って、\\( f(x) \geq 0 \\)、すなわち
\\[ x – 1 \geq \ln x \Rightarrow \ln x \leq x – 1 \\]
が成立します。
4. 応用例題3:指数・対数関数を含む不等式
問題: 実数 \\( x > 0 \\) に対して次を示せ:
\\[ e^x \geq 1 + x \\]
解説: 関数 \\( f(x) = e^x – 1 – x \\) を定義します。\\( f(0) = 0 \\)
微分して、
\\[ f'(x) = e^x – 1, \quad f”(x) = e^x > 0 \\]
\\( f'(x) = 0 \\) のとき \\( x = 0 \\)。\\( f”(x) > 0 \\) より、\\( x = 0 \\) は極小値。
したがって、\\( f(x) \geq 0 \\) であり、
\\[ e^x \geq 1 + x \\]
が成り立ちます。
5. まとめと演習問題
今回は、微分を用いて不等式を証明する方法を学びました。大事なのは、
- 関数を定義する工夫
- 増減・極値を調べる手法
- 関数の形状(凸・凹)を活用する視点
最後に練習問題をいくつか紹介します。自分で考えてみましょう。
演習問題
- \\( x > 0 \\) に対して、\\( \sqrt{x} \leq \frac{x + 1}{2} \\) を証明せよ。
- \\( x > 0 \\) に対して、\\( \ln(1 + x) \leq x \\) を証明せよ。
- \\( x > 0 \\) に対して、\\( \frac{1}{x} + \frac{1}{1 – x} \geq 4 \\) を示せ。ただし、\\( 0 < x < 1 \\)。
微分の力を使えば、複雑な不等式もスッキリと証明できます。数学IIIの力を最大限に活かし、演習を重ねて自信をつけていきましょう。