高校数学でわかる!ライプニッツの不等式の徹底解説と応用例

高校数学でわかる!ライプニッツの不等式の徹底解説と応用例

目次

ライプニッツの不等式とは?

ライプニッツの不等式とは、実数関数の積の導関数に関する不等式であり、以下のような形式で表されます。

関数 \( f(x), g(x) \) がともに \( n \) 回微分可能な関数であるとき、積の \( n \) 回微分の絶対値は次のように評価できます:

\[ |(fg)^{(n)}(x)| \leq \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} |f^{(k)}(x)||g^{(n-k)}(x)| \]

この不等式は、積の高階微分に対する評価を与えるもので、計算の誤差評価や解析学において重要な役割を果たします。

不等式の導出と基本形

ライプニッツの不等式は、ライプニッツ則(積の微分法則)をベースに導かれます。積の \( n \) 回微分は次のように展開できます:

\[ (fg)^{(n)}(x) = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} f^{(k)}(x)g^{(n-k)}(x) \]

ここで、三角不等式(絶対値の和の不等式)を用いて評価すると、次のようになります:

\[ |(fg)^{(n)}(x)| \leq \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} |f^{(k)}(x)||g^{(n-k)}(x)| \]

これがライプニッツの不等式の基本形です。

例題で理解するライプニッツの不等式

例題1: \( f(x) = e^x, \ g(x) = \sin x \) のとき、\( (fg)^{(3)}(x) \) の絶対値を評価せよ。

まず、各階数の導関数を求めます。

  • \( f^{(k)}(x) = e^x \)(すべて同じ)
  • \( g(x) = \sin x \)
  • \( g'(x) = \cos x \)
  • \( g”(x) = -\sin x \)
  • \( g”'(x) = -\cos x \)

不等式を使うと、

\[ |(fg)^{(3)}(x)| \leq \sum_{k=0}^{3} \binom{3}{k} |f^{(k)}(x)||g^{(3-k)}(x)| \]

各項を代入:

\[ \begin{align*} &\binom{3}{0}|e^x||-\cos x| + \binom{3}{1}|e^x||-\sin x| \\ &+ \binom{3}{2}|e^x||\cos x| + \binom{3}{3}|e^x||\sin x| \\ =& e^x (1\cdot|\cos x| + 3\cdot|\sin x| + 3\cdot|\cos x| + 1\cdot|\sin x|) \\ =& e^x (4|\cos x| + 4|\sin x|) = 4e^x(|\cos x| + |\sin x|) \end{align*} \]

したがって、

\[ |(fg)^{(3)}(x)| \leq 4e^x(|\cos x| + |\sin x|) \]

応用問題と解説

応用例1: \( f(x) = \frac{1}{1+x^2}, \ g(x) = \arctan x \) のとき、\( (fg)”(x) \) の絶対値を評価せよ。

まず、必要な導関数を求めます:

  • \( f(x) = \frac{1}{1+x^2} \), \( f'(x) = \frac{-2x}{(1+x^2)^2} \), \( f”(x) = \frac{6x^2 – 2}{(1+x^2)^3} \)
  • \( g(x) = \arctan x \), \( g'(x) = \frac{1}{1+x^2} \), \( g”(x) = \frac{-2x}{(1+x^2)^2} \)

不等式に代入して:

\[ |(fg)”(x)| \leq \binom{2}{0}|f(x)||g”(x)| + \binom{2}{1}|f'(x)||g'(x)| + \binom{2}{2}|f”(x)||g(x)| \]

計算:

\[ |(fg)”(x)| \leq 1 \cdot \left|\frac{1}{1+x^2} \cdot \frac{-2x}{(1+x^2)^2} \right| + 2 \cdot \left|\frac{-2x}{(1+x^2)^2} \cdot \frac{1}{1+x^2} \right| + 1 \cdot \left|\frac{6x^2 – 2}{(1+x^2)^3} \cdot \arctan x \right| \]

それぞれの項を簡単にすると、ライプニッツの不等式が複雑な導関数計算の「上限」を与えることがわかります。

まとめと学習のポイント

  • ライプニッツの不等式は、積の高階微分の絶対値を評価する際に使われます。
  • 不等式の形を覚え、三角不等式を活用することで簡潔な評価ができます。
  • 具体的な関数を使って、例題を数多くこなすことで理解が深まります。
  • 応用では微分の計算能力と不等式の使い方の両方が求められます。

ライプニッツの不等式は数学オリンピックや大学入試問題でも登場することがあります。しっかりと理解し、自信を持って使えるようになりましょう。

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