【高校数学】アーベルの総和公式を徹底解説!例題で完全マスター

【高校数学】アーベルの総和公式を徹底解説!例題で完全マスター

目次

アーベルの総和公式とは?

アーベルの総和公式(Abelの総和公式)は、積の形をした数列の和を処理するときに使える非常に便利な公式です。 部分積分に似た形式をしており、「数列における積分法的計算法」として知られています。 特に、和の中に「積」があるときに有効で、漸化式の証明や漸近評価、整列された和を簡単な形に変形するために活用されます。

アーベルの総和公式の形

数列 \( \{a_n\} \), \( \{b_n\} \) に対して、次のような形をしています:

\[ \sum_{k=1}^{n} a_k b_k = A_n b_n – \sum_{k=1}^{n-1} A_k (b_{k+1} – b_k) \]

ここで、\( A_k = \sum_{i=1}^{k} a_i \) と定義します(\( a_k \) の部分和)。

この公式は、積の形の総和 \( \sum a_k b_k \) を、部分和 \( A_k \) と差分 \( b_{k+1} – b_k \) を使って別の形に変換しています。

なぜこの公式が成り立つのか(直感的な理解)

この公式は、積分の部分積分の公式に似ています。連続関数の積分における部分積分公式:

\[ \int a(x) b'(x) dx = a(x) b(x) – \int a'(x) b(x) dx \]

この離散版のようなものと考えると理解しやすくなります。 和の中で、片方の数列を「まとめた形(累積和)」にして、もう一方を差分(変化量)にすることで、積の形を整理します。

例題1:基本的な使い方

問題:次の和をアーベルの総和公式を使って変形せよ。

\[ \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k} \cdot \left(1 – \frac{k}{n}\right) \]

解法:

この式は \( a_k = \frac{1}{k} \), \( b_k = 1 – \frac{k}{n} \) の積の和です。 まず、\( A_k = \sum_{i=1}^{k} \frac{1}{i} \) は調和数列の部分和です。

公式に当てはめると: \[ \sum_{k=1}^{n} a_k b_k = A_n b_n – \sum_{k=1}^{n-1} A_k (b_{k+1} – b_k) \]

ここで、 \[ b_k = 1 – \frac{k}{n} \Rightarrow b_{k+1} – b_k = -\frac{1}{n} \]

したがって、 \[ \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k} \left(1 – \frac{k}{n}\right) = A_n \left(1 – \frac{n}{n}\right) – \sum_{k=1}^{n-1} A_k \left(-\frac{1}{n}\right) = 0 + \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n-1} A_k \]

つまり、 \[ \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k} \left(1 – \frac{k}{n}\right) = \frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n-1} \sum_{i=1}^{k} \frac{1}{i} \] というように、入れ子構造の和に変形されます。

例題2:高校数学の典型問題への応用

問題:次の和の漸近的な挙動を求めよ。

\[ \sum_{k=1}^{n} \frac{\log k}{k} \]

解法:

このままでは手がつけづらいですが、次のように置換してアーベルの総和公式が使えます。

\( a_k = \frac{1}{k} \), \( b_k = \log k \) として、

\[ A_k = \sum_{i=1}^{k} \frac{1}{i} = H_k \quad (\text{調和数}) \]

\[ b_{k+1} – b_k = \log(k+1) – \log k = \log\left(1 + \frac{1}{k}\right) \approx \frac{1}{k} – \frac{1}{2k^2} + \cdots \]

アーベルの総和公式により、 \[ \sum_{k=1}^{n} \frac{\log k}{k} = A_n \log n – \sum_{k=1}^{n-1} A_k (\log(k+1) – \log k) \]

この式を使うことで、和の精密な評価(例えば漸近展開など)が可能になります。大学入試の難問や、数学オリンピック的な問題にもしばしば応用されます。

まとめと使い分けのポイント

  • 積の形の和(特に \( a_k b_k \) 型)が出てきたら、まずアーベルの総和公式を疑う。
  • 一方の数列を累積和(部分和)、もう一方を差分の形に分解するのがポイント。
  • 漸化式、漸近評価、数列の評価問題など広範囲に応用できる。
  • 特に調和数列や対数、冪乗などが混ざるとアーベルの出番。

このように、アーベルの総和公式は単なる変形にとどまらず、複雑な数列の構造を明らかにし、より高度な数学的処理への道を開いてくれる強力なツールです。大学入試や数学コンテストでも頻出なので、しっかりと使いこなせるように練習しておきましょう。

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