【完全理解】三変数の対称式を基本対称式で表す方法|高校数学解説
目次
はじめに:対称式とは?
三変数 \( x, y, z \) に関する式の中で、変数の入れ替えに対して値が変わらないものを対称式と呼びます。
例えば次の式はすべて対称式です:
- \( x + y + z \)
- \( xy + yz + zx \)
- \( x^2 + y^2 + z^2 \)
- \( xyz \)
これらはどれも、変数を入れ替えても式の値が変わりません(例:\( x \leftrightarrow y \) など)。
基本対称式とは
三変数 \( x, y, z \) の基本対称式とは、以下の3つの式を指します:
- \( \sigma_1 = x + y + z \)
- \( \sigma_2 = xy + yz + zx \)
- \( \sigma_3 = xyz \)
これらはそれぞれ、一次、二次、三次の対称式であり、他のすべての三変数対称式はこれらを使って表すことができます。
この「基本対称式だけで他の対称式を表せる」性質を利用することで、対称式の計算や因数分解が非常に楽になります。
対称式を基本対称式で表す方法
それでは、具体的にどうやって対称式を基本対称式で表すかを見ていきましょう。
ステップ1:次数の確認
まず、与えられた対称式の「次数(最大の次数)」を確認します。次数が高いときは、何らかの関係式を使って次数を落とす必要があります。
ステップ2:対称性を利用した置換
すべての項が対称性を持つことから、代数的に \(\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3\) を使って置き換えることを目指します。これは試行錯誤が必要な場合もありますが、よく出るパターンは覚えておくと便利です。
よく使う関係式
- \( x^2 + y^2 + z^2 = \sigma_1^2 – 2\sigma_2 \)
- \( x^3 + y^3 + z^3 = \sigma_1^3 – 3\sigma_1\sigma_2 + 3\sigma_3 \)
- \( (x + y + z)^2 = \sigma_1^2 \)
例題で理解を深めよう
例題1:
次の対称式を基本対称式で表せ:
\( x^2 + y^2 + z^2 \)
これは次の公式からすぐにわかります:
\( x^2 + y^2 + z^2 = \sigma_1^2 – 2\sigma_2 \)
例題2:
\( x^3 + y^3 + z^3 \) を基本対称式で表せ。
公式より:
\( x^3 + y^3 + z^3 = \sigma_1^3 – 3\sigma_1\sigma_2 + 3\sigma_3 \)
例題3:
次の対称式を基本対称式で表せ:
\( x^2y + y^2z + z^2x \)
これは少し工夫が必要ですが、次のように表せます:
\[ x^2y + y^2z + z^2x + xy^2 + yz^2 + zx^2 = \sigma_1 \sigma_2 – 3 \sigma_3 \] より、 \[ x^2y + y^2z + z^2x = \frac{1}{2} (\sigma_1 \sigma_2 – 3 \sigma_3) \]
例題4:
\( (x – y)^2 + (y – z)^2 + (z – x)^2 \) を基本対称式で表せ。
まず展開すると、 \[ (x – y)^2 + (y – z)^2 + (z – x)^2 = 2(x^2 + y^2 + z^2 – xy – yz – zx) \]
これを基本対称式に変換すると、 \[ 2((\sigma_1^2 – 2\sigma_2) – \sigma_2) = 2(\sigma_1^2 – 3\sigma_2) \]
まとめ
- 対称式は変数の入れ替えに対して不変な式である。
- 三変数の基本対称式は \( \sigma_1 = x + y + z \)、\( \sigma_2 = xy + yz + zx \)、\( \sigma_3 = xyz \)。
- 多くの対称式は、これらの基本対称式を用いて表すことができる。
- 代表的な変換公式を覚えておくと、素早く変換できる。
この知識は、入試や数学オリンピックなどでも頻出の重要テーマです。しっかり理解して得点源にしていきましょう!