高校生でもわかる!効用関数と単調変換の意味と役割
このページでは、「効用関数」と「単調変換」という経済学のキーワードについて、数学があまり得意でない高校生でもわかるように、図や例を交えて徹底解説します。
目次
効用関数とは?
効用関数とは、「ある人がどれくらいその選択肢を好むか」を数字で表した関数です。例えば、ある人がリンゴよりバナナを好むなら、効用関数でバナナの効用がリンゴより高い数値になります。
効用関数は以下のように書かれます:
例えば、消費者が財 \( x \) と財 \( y \) を消費するときの効用関数:
\[ U(x, y) = x \cdot y \]
この場合、財 \( x = 3 \), \( y = 4 \) のときの効用は \( U(3, 4) = 3 \times 4 = 12 \) です。
効用の考え方:好き嫌いの尺度
効用は「好き嫌い」を数字で表したものであり、その数字自体には絶対的な意味はありません。たとえば、ある選択肢の効用が 10、別の選択肢の効用が 5 なら、「前者が後者より好まれている」ことは分かりますが、「2倍好き」という意味ではありません。
重要なのは順位(順序)です。これを序数的効用と呼びます。
単調変換とは何か?
単調変換とは、ある関数に対して、その値の順番(大小関係)を保ったまま数値を変形することです。
例えば、次のような関数は単調増加関数です:
- 平方関数:\( f(u) = u^2 \)(ただし \( u \geq 0 \))
- 対数関数:\( f(u) = \log(u) \)(ただし \( u > 0 \))
- 指数関数:\( f(u) = e^u \)
たとえば、効用関数 \( U(x, y) = x \cdot y \) を対数関数で単調変換すると:
\[ V(x, y) = \log(x \cdot y) = \log x + \log y \]
この新しい関数 \( V(x, y) \) も、元の効用関数と同じ「好みの順番」を表現しています。
効用関数と単調変換の関係
経済学では、ある効用関数を単調変換しても、選好(どちらを好むか)を表す情報は変わらないと考えます。つまり、効用関数の形が変わっても、人がどちらを選ぶかは変わりません。
これは、効用関数が「好き嫌いの順番」を表すものであり、その順番が変わらなければ、数値そのものの意味は変えてもよいからです。
効用関数の例とその単調変換
例1:元の効用関数
\[ U(x, y) = x \cdot y \]
この関数を単調変換してみましょう。
例2:対数を使った単調変換
\[ V(x, y) = \log(x \cdot y) = \log x + \log y \]
例3:指数関数を使った単調変換
\[ W(x, y) = e^{x \cdot y} \]
どの関数も、\( x \cdot y \) が大きくなるほど効用が高くなります。そのため、選好順序は変わりません。
なぜ単調変換しても意味が変わらないの?
単調変換は「大小関係」を維持します。したがって、以下の関係が成立していれば:
\[ U(x_1, y_1) > U(x_2, y_2) \Rightarrow f(U(x_1, y_1)) > f(U(x_2, y_2)) \]
人の選好は変わりません。これは無差別曲線の形が変わらないことを意味します。無差別曲線とは、効用が同じになる \( (x, y) \) の組を結んだ線で、単調変換してもその線は同じ位置にあります。
つまり、経済学で重要なのは「どれくらい好きか」ではなく、「どっちを選ぶか」なのです。
まとめ
- 効用関数は、人の好みの順位を表す関数。
- 効用関数には様々な形があるが、単調変換しても人の選好は変わらない。
- 単調変換とは、順番を保ったまま数値を変えること。
- 経済学では、「選好の構造」さえ守られていれば、効用関数の形を変えてもよい。
高校生のうちからこの考え方に慣れておくと、大学のミクロ経済学がとてもスムーズに理解できるようになります!