【高校生にもわかる】技術的限界代替率と相対価格の徹底解説
このページでは、経済学の中でも重要な概念である「技術的限界代替率(Marginal Rate of Technical Substitution, MRTS)」と「相対価格(Relative Price)」について、高校生にもわかりやすく、例や図を使って丁寧に解説します。
目次
技術的限界代替率(MRTS)とは?
技術的限界代替率(MRTS)は、ある生産量を維持したまま、一方の生産要素を減らす代わりにもう一方をどれだけ増やせばよいかを表す指標です。
例えば、労働(\(L\))と資本(\(K\))を使って商品を生産する場合、労働を1単位減らしたとき、どれだけ資本を増やせば同じ量を作れるかがMRTSです。
数式で表すと、
\\[ MRTS_{LK} = -\frac{dK}{dL} \Bigg|_{Q=一定} \\]
つまり、等量生産曲線(同じ生産量を表す曲線)に沿って移動するときの資本と労働の変化比率です。
MRTSは通常、限界生産力の比率として次のようにも書けます:
\\[ MRTS_{LK} = \frac{MP_L}{MP_K} \\]
ここで、\\(MP_L\\):労働の限界生産力、\\(MP_K\\):資本の限界生産力です。
相対価格とは?
相対価格とは、ある財の価格を別の財の価格で割ったもので、「交換比率」とも呼ばれます。例えば、パン1個が200円で、牛乳1本が100円なら、パンの相対価格は牛乳2本分ということになります。
生産要素に関しても同様で、労働の価格(賃金)を\\(w\\)、資本の価格(レンタル料)を\\(r\\)とすると、
\\[ \text{労働に対する資本の相対価格} = \frac{w}{r} \\]
この相対価格は、生産コストを最小化するために重要な情報です。
MRTSと相対価格の違いと関係
MRTSは「技術的」な関係、相対価格は「市場的」な関係を示します。
- MRTS:企業の内部的な技術条件。生産技術の話。
- 相対価格:市場が決める価格の比率。外部環境の話。
しかし、生産者が利潤を最大化(またはコストを最小化)する際には、これらが一致する点を目指します。つまり、
\\[ MRTS_{LK} = \frac{w}{r} \\]
となるように、労働と資本を選ぶのが合理的です。
具体例:パン工場での労働と機械
あるパン工場では、労働(人の手作業)と機械(自動化装置)の2つを使って生産しています。
例:
- 労働:1人あたり1日50個のパンが作れる
- 機械:1台あたり1日100個のパンが作れる
- 賃金:1人あたり1日5000円
- 機械使用料:1台あたり1日10000円
このときの限界生産力とコストを計算してみましょう。
\\[ MP_L = 50,\quad MP_K = 100,\quad w = 5000,\quad r = 10000 \\]
MRTS:
\\[ MRTS_{LK} = \frac{MP_L}{MP_K} = \frac{50}{100} = 0.5 \\]
相対価格:
\\[ \frac{w}{r} = \frac{5000}{10000} = 0.5 \\]
このとき、MRTSと相対価格が一致しているため、生産者はちょうど良いバランスで労働と機械を使っていると考えられます。
補足:生産者の最適化と等量生産曲線
生産者は、同じ生産量を達成するためにできるだけコストを抑えたいと考えます。このとき使われるのが「等量生産曲線(isoquant)」と「等費用線(isocost)」です。
- 等量生産曲線:同じ生産量を実現する労働と資本の組み合わせを表す。
- 等費用線:同じコストになる労働と資本の組み合わせを表す。
最適な生産点では、これら2つの線が接しており、
\\[ MRTS = \frac{w}{r} \\]
が成立しています。
まとめ
- MRTSは技術的な生産要素の代替率で、限界生産力の比から求まる。
- 相対価格は市場での価格の比で、生産コストのバランスに影響する。
- 最適な生産点では、MRTSと相対価格が一致する。
- 等量生産曲線と等費用線の接点が生産者の最適選択を表す。
経済学において、「技術」と「価格」の両方の視点から考えることは非常に重要です。MRTSと相対価格の関係をしっかり理解しておけば、より深く生産理論を学ぶことができます。