高校生のための経済学:実質賃金と限界生産力のしくみを徹底解説!
目次
実質賃金とは何か?
実質賃金とは、物価の影響を除いた「本当の意味での給料」のことです。名目賃金(お給料の金額)だけを見ていると、物価が上がっても下がっても気づかないかもしれません。
たとえば、去年は月20万円でもラーメンが1杯500円だったのに、今年は同じ20万円でもラーメンが1杯1000円になったら、ラーメンが半分しか買えません。これが実質賃金の低下です。
実質賃金は、次の式で表されます:
$$ \text{実質賃金} = \frac{\text{名目賃金}}{\text{物価水準}} $$
限界生産力って何?
限界生産力(Marginal Product)とは、「労働者を1人増やしたときに、生産量がどれだけ増えるか」を示す経済学の概念です。労働の限界生産力(Marginal Product of Labor, MPL)は、次のように定義されます:
$$ MPL = \frac{\partial Q}{\partial L} $$
ここで、
- \( Q \):生産量(Output)
- \( L \):労働投入量(働く人の数や労働時間)
たとえば、パン屋さんで1人で1日100個のパンを作れるとして、もう1人増やしたら1日180個作れるようになった場合、その人の限界生産力は80個です。
生産関数と限界生産力の関係
生産関数とは、「どれくらいの労働や資本を使えば、どれくらいの生産ができるか」を表す式です。たとえば次のような形が一般的です:
$$ Q = f(L, K) $$
ここで、
- \( L \):労働
- \( K \):資本(機械や設備など)
この生産関数を使って労働の限界生産力は次のように求めます:
$$ MPL = \frac{\partial f(L, K)}{\partial L} $$
つまり、生産関数を労働 \( L \) で微分すれば、限界生産力が出てきます。
実質賃金と限界生産力のつながり
経済学では「企業は労働の限界生産力と同じだけの実質賃金を支払う」と考えられています。なぜなら、企業は利益を最大化したいので、「追加で雇った人がもたらす利益」と「支払う給料」が同じになるところまでしか雇わないからです。
企業の利益最大化の条件は以下の通りです:
$$ \text{実質賃金} = MPL $$
この式は、労働市場において労働者の価値が「限界生産力」で決まるということを意味しています。
例で考える:パン屋さんの話
具体的な例で考えてみましょう。あるパン屋さんでは、次のように労働者数と生産量が変化します:
| 労働者数 | 生産量(個) | 限界生産力(個) |
|---|---|---|
| 1人 | 100 | – |
| 2人 | 180 | 80 |
| 3人 | 240 | 60 |
| 4人 | 280 | 40 |
このとき、パン1個あたりの価格が200円、物価水準が2だとします。名目賃金が1万6000円だとすると、実質賃金は:
$$ \frac{16000}{2} = 8000 $$
一方、3人目の労働者の限界生産力は60個なので、1個200円の価格で売れるとすると、
$$ 60 \times 200 = 12000 $$
これは名目賃金1万6000円より低いため、企業は3人目までは雇いますが、4人目は利益が小さくなるため雇わないかもしれません。
まとめと応用
ここまでの内容をまとめると以下のようになります:
- 実質賃金とは、物価の影響を除いた「本当の給料」
- 限界生産力とは、労働者を1人追加したときの生産量の増加分
- 企業は、労働の限界生産力に基づいて実質賃金を支払う
- これは、企業の利益最大化行動から自然に導かれる
この考え方は、経済全体の賃金決定、労働市場、失業、最低賃金政策などの議論の基礎になります。大学でのミクロ経済学やマクロ経済学でも繰り返し出てくる重要なテーマです。