高校生でもわかる!リスク回避的効用関数のやさしい経済学
目次
1. 効用とは何か?
経済学では、人がどれだけ満足するかを「効用(utility)」という考え方で表します。たとえば、1000円をもらってうれしいと思えば、その「うれしさ」の程度が効用です。
効用は主観的なものなので、数値そのものには意味がありません。ただし、比較はできます。たとえば、1000円の効用よりも2000円の効用のほうが大きい、というように使います。
2. リスクと効用:なぜ関係があるの?
私たちは将来に不確実性(リスク)があると、それを避けたくなります。これを「リスク回避(risk aversion)」といいます。たとえば、
- 確実に1000円もらえる
- 50%の確率で2000円、50%の確率で0円
この2つを比べたとき、多くの人は前者を選びます。なぜなら、後者は「期待値」が同じでも、損するかもしれないという不安があるからです。
このような行動を数式で表すために、リスクを考慮した効用関数を使います。
3. リスク回避的な効用関数とは
効用関数とは、財(たとえばお金)と効用の関係を示す関数です。リスク回避的な人は、以下のような効用関数を持っています:
$$ u(x) = \sqrt{x}, \quad u(x) = \log(x), \quad u(x) = 1 – e^{-ax} \quad (a > 0) $$
これらに共通する特徴は、2階微分が負になる(つまり「下に凸」な)関数であることです。これがリスク回避の性質を反映します。
4. 例題:宝くじと効用
例題を見てみましょう。
あなたは以下の2つの選択肢を与えられました。
- A:確実に100万円もらえる
- B:50%の確率で200万円、50%の確率で0円
数学的に期待値は同じです。
$$ \text{期待値} = 0.5 \times 200 + 0.5 \times 0 = 100 $$
しかし、効用で比べてみましょう。効用関数を \( u(x) = \sqrt{x} \) とします。
- Aの効用: \( u(100) = \sqrt{100} = 10 \)
- Bの期待効用: \( 0.5 \times \sqrt{200} + 0.5 \times \sqrt{0} = 0.5 \times \sqrt{200} \approx 0.5 \times 14.14 \approx 7.07 \)
このように、Bの期待効用がAより低いため、リスク回避的な人はAを選びます。
5. 数学的な定義と性質
経済学では、リスク回避的であるとは、次の条件を満たす効用関数を持つことを意味します:
$$ u”(x) < 0 $$
つまり、効用関数の2階導関数が負であることです。
さらに、次の概念も重要です:
- 期待効用 \( EU = \sum p_i u(x_i) \)
- 確実同等 \( CE \):効用 \( u(CE) = EU \) を満たす金額
- リスクプレミアム \( RP = E[x] – CE \)
リスクプレミアムが大きいほど、よりリスクを避けたいと考えていることになります。
6. まとめと理解を深める練習問題
ここまでの内容を整理しましょう。
- 効用とは満足度の尺度である。
- リスク回避とは、期待値が同じでも確実な選択を好むこと。
- リスク回避的な効用関数は下に凸で、2階微分が負である。
- 期待効用と確実同等、リスクプレミアムで意思決定を定量化できる。
練習問題
- 効用関数 \( u(x) = \log(x) \) のもとで、50%の確率で100万円、50%の確率で25万円の宝くじの期待効用を求めよ。
- 上記の宝くじに対して、確実にもらえる金額で同じ効用となる金額(確実同等)を求めよ。
- このときのリスクプレミアムを計算せよ。
このように、リスク回避的効用関数は、私たちの直感的な選択を数式でうまく表すことができます。経済学やファイナンスの基礎としてとても重要な概念です。