高校生でもわかる公共財の最適供給量|経済学の例題で徹底解説
公共財とは?特徴と私的財との違い
まずは「公共財」が何かを理解しましょう。公共財とは、誰でも自由に使える財で、1人が使っても他の人の利用が妨げられない性質を持つものです。経済学ではこれを「非排除性」と「非競合性」と言います。
- 非排除性:ある人がその財を使うことを他の人が妨げられない。
- 非競合性:一人が使っても他の人の利用価値が減らない。
たとえば、街灯や国防、道路の信号システムなどが公共財の例です。対して、私的財は「他の人が使うのを排除できる」「使う人が増えると価値が減る」ものです。たとえば、リンゴや本などです。
公共財の供給は市場に任せると不足しがちなので、政府などが供給量を調整します。その調整の目安が「公共財の最適供給量」です。
公共財の最適供給量の考え方
公共財の最適供給量とは、社会全体の満足度を最大にするために供給すべき量を指します。ここで重要なポイントは、公共財は消費者一人ひとりの満足度(限界便益)を足し合わせて考えることです。
具体的には、消費者全員の限界便益の合計(社会的限界便益)と供給にかかる限界費用(社会的限界費用)が等しくなる点が最適な供給量となります。
数式で表すと、公共財の最適供給量 \( G^* \) は以下の条件を満たします:
ここで、
- \( MB_i(G) \):消費者 \( i \) の公共財 \( G \) に対する限界便益
- \( MC(G) \):公共財 \( G \) の供給にかかる限界費用
- \( n \):消費者の人数
つまり、みんなの「これ以上1単位増やしてほしい価値」を合計したものが、その1単位を増やすのにかかるコストと同じときが、効率的な供給量です。
例題で理解する最適供給量の計算
ここで、簡単な例題を通じて最適供給量の求め方を見てみましょう。
例題:
2人の消費者がいる社会で、公共財の供給量を決めるとき、それぞれの限界便益が以下のように与えられています。
- 消費者1の限界便益:\( MB_1(G) = 30 – 2G \)
- 消費者2の限界便益:\( MB_2(G) = 20 – G \)
一方、公共財の供給にかかる限界費用は一定で、\( MC = 10 \)とします。
このとき、公共財の最適供給量 \( G^* \) はどうなるでしょうか?
解き方:
公共財の最適供給量の条件は:
これを代入すると、
左辺をまとめると、
両辺から10を引いて、
したがって、
よって、この社会の公共財の最適供給量は約13.33単位となります。
補足
この例題からわかることは、公共財の最適供給量は、消費者全員の限界便益の合計が限界費用に等しくなる点で決まるということです。もし限界便益の合計が限界費用より小さい場合は供給量を減らし、大きい場合は増やすのが望ましいという判断になります。
公共財の供給過多・供給不足とは?
公共財は市場メカニズムに任せると、「供給不足」になりやすいと言われています。これは「フリーライダー問題」があるためです。フリーライダーとは、自分はお金を出さずに公共財の恩恵だけを受ける人のことです。
この問題があるため、個々の消費者は自分が負担すべきコストを払いたがらず、結果的に公共財の供給量が社会全体の最適量より少なくなります。
一方、供給過多は公共財ではあまり起こりませんが、もし限界費用よりも限界便益の合計が少なくなったのに供給が続く場合、資源の無駄遣いになってしまいます。
そのため、公共財の供給量を決める際には、社会全体の利益を考慮し、適切な供給量を行政や政府が決めることが重要です。
まとめと重要ポイント
- 公共財は非排除性と非競合性が特徴で、みんなで共有する財である。
- 最適供給量は、全消費者の限界便益の合計が限界費用と等しくなる量で決まる。
- 例題を通して、限界便益と限界費用の関係から最適供給量を計算できる。
- 市場だけに任せると供給不足になりやすいため、政府などが適切に調整する必要がある。
高校生の皆さんが経済学の基礎として「公共財」と「最適供給量」の概念を理解することは、社会や経済の仕組みを知る上で非常に役立ちます。ぜひ今回の解説と例題を参考にして、しっかりと復習してください。