1社だけ巨大?ガリバー型寡占をやさしく徹底解説【高校生向け経済学】
目次
ガリバー型寡占とは?
「ガリバー型寡占(Gulliver-type Oligopoly)」とは、少数の企業が市場を支配している「寡占市場」の中でも、特に1社だけが圧倒的に大きなシェアを持っているケースを指します。まるで小人の中に巨人(ガリバー)が1人いるような構造から、このような名前がつけられています。
例えば、A社が市場シェアの80%を持ち、残りの20%をB社・C社・D社が分け合っているような場合です。このときA社が「ガリバー企業」となり、価格設定や生産量などに大きな影響力を持ちます。
普通の寡占との違い
通常の寡占(例:クールノー寡占やベルトラン寡占)では、2社〜数社がある程度対等な立場で競争します。一方、ガリバー型寡占では、1社だけが圧倒的であり、他の企業はフォロワーのような立場になります。
- 通常の寡占:企業A 40%、企業B 35%、企業C 25% → 互いに影響を及ぼし合う
- ガリバー型寡占:企業A 85%、企業B 10%、企業C 5% → 企業Aが価格の主導権を握る
ガリバー型寡占の具体例
実際の市場で見られるガリバー型寡占の例をいくつか紹介します。
1. オンライン検索エンジン
ある検索エンジン企業が世界中の検索市場の9割近くを握っている状況です。他の検索エンジンも存在しますが、利用者数では大差があり、広告収入やアルゴリズム改良のスピードでも差がついています。
2. インターネット通販
一部の国では、ネットショッピング市場で1社が60〜70%のシェアを持ち、他の企業がそのあとを追うような構造になっています。この企業が送料無料キャンペーンやタイムセールを行うと、他社も追従せざるを得ません。
3. ソフトドリンク市場
ある国で、特定の炭酸飲料メーカーが圧倒的なブランド力と流通網を持ち、他社はニッチ市場でしか戦えない、というケースもガリバー型寡占に分類できます。
市場への影響と問題点
ガリバー型寡占には次のような影響があります。
1. 価格支配力の強さ
ガリバー企業は市場価格を事実上コントロールできます。場合によっては価格を引き上げても、消費者は他に選択肢がなく、その価格を受け入れるしかありません。
2. 競争の形骸化
他社が競争する余地がなくなり、イノベーションが停滞するリスクがあります。さらに、新規参入も困難になります(参入障壁の高さ)。
3. フォロワー企業の受動的行動
フォロワー企業は、ガリバー企業の動きを見て対応を決めるため、戦略の自由度が小さくなります。
高校生にもできる!図と数式でガリバー型寡占を理解しよう
まず、簡単な需要関数を考えます:
需要関数:\\( Q = 100 – P \\)
ここで、ガリバー企業Aが価格リーダーとして行動し、フォロワー企業Bがその価格に応じて生産量を決める「スタックルバーグ型」の構造を考えます。
企業A(リーダー)の利潤最大化
企業Aのコスト関数を\\( C_A(q_A) = 10q_A \\)、企業Bのコスト関数を\\( C_B(q_B) = 10q_B \\)とします。
市場価格は合計供給量に依存し、\\( P = 100 – (q_A + q_B) \\)です。
企業Bは企業Aの生産量\\( q_A \\)を見て、生産量\\( q_B \\)を決めます。Bの利潤は以下のように書けます:
\\[ \pi_B = P \cdot q_B – 10q_B = (100 – q_A – q_B)q_B – 10q_B \\]
これを最大化すると、企業Bの反応関数(反応曲線)は:
\\[ q_B = \frac{90 – q_A}{2} \\]
これを企業Aの利潤最大化問題に代入して、Aの利潤を最大化する\\( q_A \\)を求めます:
\\[ \pi_A = (100 – q_A – q_B)q_A – 10q_A \\]
\\[ = \left(100 – q_A – \frac{90 – q_A}{2}\right)q_A – 10q_A \\]
整理して最大化すれば、ガリバー型寡占におけるA社の戦略的行動が明らかになります。
まとめ
- ガリバー型寡占は「1社だけが圧倒的に強い」寡占市場の特殊な形
- 価格や競争のルールを事実上その企業が決める
- 市場への影響力は大きく、競争の活性化や新規参入を妨げる可能性もある
- 数式モデル(スタックルバーグ型)を使えば、その力関係を論理的に理解できる
このように、高校生でも図や具体例、簡単な数式を通してガリバー型寡占の特徴や問題点を理解することができます。