高校生のための徹底解説:寡占市場とは?仕組みと企業の例をわかりやすく学ぼう
目次
寡占市場とは?
寡占市場(かせんしじょう)とは、少数の企業が市場を支配している市場構造のことです。完全競争市場や独占市場とは異なり、数社が競争と協力の間で複雑な関係を持ちながら価格や生産量を決定するのが特徴です。
この市場構造では、1社が価格や生産量を変えると、他の企業もその影響を受けて行動を変える必要があります。したがって、企業同士の「かけひき」や「読み合い」が非常に重要になります。
寡占市場の特徴
- 少数の企業が市場を支配: 数社の影響力が大きいため、一社の行動が市場全体に波及します。
- 参入障壁が高い: 設備投資やブランド力、技術力が必要で、新規参入が難しいです。
- 価格の硬直性: 他社の反応を気にして、企業は価格をあまり動かさない傾向にあります。
- 非価格競争: 広告やサービスの質などで競争することが多いです。
寡占市場の具体例(企業)
以下は、日本や世界で寡占市場を形成している代表的な業界と企業の例です。
- 自動車業界: トヨタ、ホンダ、日産など。少数の大手メーカーが市場を分け合っています。
- 通信業界: NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が中心。
- 飲料業界: コカ・コーラとサントリーが主導的な役割を果たしています。
- ゲーム業界: 任天堂、ソニー、マイクロソフトの3社が主な競争相手。
これらの企業はそれぞれ強力なブランド力を持ち、市場において高いシェアを保持しています。
価格戦略とゲーム理論
寡占市場では、他社の動きを予想しながら戦略を決める必要があります。このような状況を分析するのに有効なのが「ゲーム理論」です。
たとえば、企業Aと企業Bが価格を下げるか維持するかの選択をする場合、以下のような戦略表(ペイオフマトリクス)で考えます。
| 企業A / 企業B | 値下げ | 価格維持 |
|---|---|---|
| 値下げ | (5, 5) | (8, 2) |
| 価格維持 | (2, 8) | (6, 6) |
この表を見て、どの戦略が自社にとって最も利益があるか、また相手がどう動くかを考えて行動します。
数式で見る寡占市場の分析
寡占市場の理論的分析では、クールノー・モデルやベルトラン・モデルが使われます。
クールノー競争
企業が生産量を戦略変数とする場合、クールノー・モデルが用いられます。2社(企業1と企業2)の市場で、需要曲線が次のように与えられるとします:
\( P = a – b(Q_1 + Q_2) \)
ここで、\( Q_1 \)と\( Q_2 \)はそれぞれの企業の生産量、\( P \)は市場価格です。企業1の利潤関数は以下のようになります:
\( \pi_1 = (P – c)Q_1 = (a – b(Q_1 + Q_2) – c)Q_1 \)
企業1は\( Q_2 \)を所与として、自分の利潤を最大化するように\( Q_1 \)を選びます。これにより、反応関数を導き出し、ナッシュ均衡を求めます。
ベルトラン競争
一方、企業が価格を戦略変数とする場合はベルトラン・モデルです。価格競争が激しくなり、限界費用まで価格が下がる可能性があります(ベルトラン・パラドックス)。
まとめ
寡占市場は、現実の経済において非常に一般的な市場構造です。少数の企業が互いに影響を及ぼしながら価格や生産を決定し、消費者にも企業にも大きな意味を持つ環境が生まれます。
このような市場を理解するには、経済の基本理論に加え、ゲーム理論や数学的なモデルを活用することが重要です。高校生のうちからこうした構造を学ぶことで、将来の経済学やビジネス理解にも役立つでしょう。