有界閉区間上の連続関数が必ず最大値を持つ理由を徹底解説
定理の内容と背景
実解析の基本定理の一つに「有界閉区間上の連続関数は最大値を持つ」というものがあります。これは、数学の多くの分野で重要な役割を果たし、特に最適化問題や微分積分学の基礎として頻繁に利用されます。
この定理は、関数が連続であること、そして定義域が「有界かつ閉じている区間」であることが最大値の存在に不可欠な条件であることを示しています。
定理の厳密な表現
区間 を考えます。ここで であり、 とします。
関数 が連続であるとき、次のことが成り立ちます。
ある が存在して、
つまり、最大値を持つ。
同様に最小値も持ちますが、ここでは最大値に着目します。
最大値の存在の直感的理解
有界閉区間とは、区間の端点も含み、さらに区間の長さが有限であることを意味します。例えば、区間 は有界閉区間の典型例です。
連続関数は、途中で「ジャンプ」や「途切れ」がありません。区間が閉じているため端点も含まれ、また有界なので無限に発散することもありません。したがって、関数の値は必ず区間内のどこかで最大値(および最小値)を取るというわけです。
もし区間が開区間であったり、関数が連続でなかった場合、最大値が存在しないこともあります。例えば、開区間 上の関数 は最大値を持ちません(1は区間に含まれないため)。
具体例と非例
例1: 連続関数の最大値
関数 を区間 で考えます。
この関数は二次関数で連続かつ有界閉区間上に定義されています。最大値を求めると、微分して極値を調べるとよいです。
この点は区間内なので候補です。端点も候補として調べます。
最大値は であり、存在します。
非例1: 開区間上の関数で最大値を持たない例
関数 を開区間 で考えます。この関数は連続ですが、最大値は存在しません。
なぜなら、区間の端点 は含まれていないので、 の極限は1に近づくものの、1での値は定義されません。
非例2: 関数が連続でない場合
区間 上の関数
この関数は不連続であり、最大値は ですが、連続性が破られているためこの定理の枠外です。
証明の概要とポイント
この定理は「最大値の存在定理(Weierstrassの定理)」とも呼ばれ、以下の性質を用いて証明されます。
- 有界閉区間 はコンパクト集合である。
- 連続関数はコンパクト集合上で最大値・最小値を取る。
証明の流れの概略は次の通りです。
- 関数 が連続なら、像 は有界かつ閉集合となる。
- 実数の閉集合は最大値と最小値を持つため、最大値を達成する点 が存在する。
数学的には、極限の定義やコンパクト性の理論を用いて厳密に示されますが、このような集合の性質が鍵となります。
応用例と重要性
この定理は多くの数学的・工学的問題で重要な基盤です。
- 最適化問題: 関数の最大値や最小値を探す問題の理論的保証。
- 微積分: 微分可能性と最大値の関係、ロールの定理や平均値の定理の前提となる。
- 経済学: 効用関数やコスト関数の最大・最小値の存在証明に。
- 物理学や工学: 状態方程式やシステムの安定性解析での最大値の存在保証。
連続性と有界閉区間という条件は一見単純ですが、これを外すと最大値が存在しなくなるケースが多々あるため、慎重に扱う必要があります。
以上、「有界閉区間上の連続関数は最大値を持つ」定理について、内容の理解と具体例、証明の概要、応用例まで幅広く解説しました。