収束する数列はなぜ必ず有界なのか?徹底的にわかりやすく解説!
目次
数列の収束と有界の定義
まずは基本となる用語の定義を確認しましょう。
数列の収束
数列 \\(\{a_n\}\\) が実数 \\(L\\) に収束するとは、次の条件を満たすことを言います:
任意の \\(\varepsilon > 0\\) に対して、ある自然数 \\(N\\) が存在して、すべての \\(n \geq N\\) に対して
\\[ |a_n – L| < \varepsilon \\] が成り立つとき、\\(\lim_{n \to \infty} a_n = L\\) と書き、「\\(\{a_n\}\\) は \\(L\\) に収束する」と言います。
数列の有界性
数列 \\(\{a_n\}\\) が有界であるとは、ある正の実数 \\(M\\) が存在して、すべての \\(n\\) に対して
\\[ |a_n| \leq M \\] が成り立つことを言います。つまり、数列の値が「ある範囲内」にとどまっているという意味です。
「収束 ⇒ 有界」の証明
ここでは、「収束する数列は必ず有界である」ことを厳密に証明します。
証明
\\(\{a_n\}\\) を実数列とし、\\(a_n \to L\\)(つまり収束)すると仮定します。
\\(\varepsilon = 1\\) に対して、収束の定義より、ある自然数 \\(N\\) が存在して、すべての \\(n \geq N\\) に対して
\\[ |a_n – L| < 1 \\] が成り立ちます。
このとき、\\(n \geq N\\) に対して三角不等式を用いると:
\\[ |a_n| = |a_n – L + L| \leq |a_n – L| + |L| < 1 + |L| \\]
次に、\\(n < N\\) の有限個の \\(a_n\\) に対しては、それぞれの絶対値を計算して最大値を取れば良いです。すなわち、次を定義します:
\\[ M_1 = \max\{ |a_1|, |a_2|, \ldots, |a_{N-1}| \} \\]
そして全体として、数列のすべての項に対して
\\[ |a_n| \leq \max\{ M_1, 1 + |L| \} =: M \\]
よって \\(\{a_n\}\\) は有界であることが示されました。
具体例:収束する有界な数列
例1:\\(a_n = \frac{1}{n}\\)
この数列は \\(n \to \infty\\) で 0 に収束します。実際、
\\[ |a_n – 0| = \left| \frac{1}{n} \right| < \varepsilon \\] となる \\(n\\) を選べば良いので収束が確認できます。そして
\\[ |a_n| = \frac{1}{n} \leq 1 \\] なので明らかに有界です。
例2:\\(a_n = (-1)^n \cdot \frac{1}{n}\\)
符号は交互に変わりますが、絶対値は \\(\frac{1}{n}\\) で 0 に収束するので、全体としても 0 に収束します。
この数列も有界で、\\(|a_n| = \frac{1}{n} \leq 1\\) なので同様に有界です。
例3:定数列 \\(a_n = 5\\)
すべての項が 5 の数列は明らかに 5 に収束し、\\(|a_n| = 5\\) より有界です。
反例:有界だが収束しない数列
「有界 ⇒ 収束」は成り立ちません。以下に反例を示します。
例:\\(a_n = (-1)^n\\)
この数列は、\\(1, -1, 1, -1, \ldots\\) と交互に変化するため、極限が存在しません。すなわち収束しません。
しかし、すべての項は \\(-1\\) または \\(1\\) なので
\\[ |a_n| \leq 1 \\] となり、有界ではあります。
よくある誤解と注意点
- 有界ならば収束すると誤解する人が多いですが、反例の通り、これは誤りです。
- 収束する数列が有界であるという性質は、数学の多くの理論(例えば連続性や積分論)でも重要です。
- 一方で「単調かつ有界」な数列は必ず収束する、という定理(単調収束定理)もあります。こちらと混同しないようにしましょう。
まとめ
この記事では、「収束する数列は必ず有界である」ことを定義から証明、具体例と反例を通じて徹底的に解説しました。
- 収束とは「極限に近づく」性質。
- 収束する数列は必ず有界である(証明済)。
- 有界な数列が必ず収束するとは限らない(反例あり)。
この性質は数学の解析において極めて基本的かつ重要な事実です。しっかり理解しておきましょう。