微分積分学の基本定理を解説

微分積分学の基本定理を解説

目次

微分積分学の基本定理とは?

微分積分学の基本定理(Fundamental Theorem of Calculus)は、微分と積分という一見対照的な2つの操作の間に深い関係があることを示します。これにより、積分を微分の逆操作として捉えることが可能になります。

この定理は主に2つの部分(第1基本定理と第2基本定理)から成り立ちます。

第1基本定理:積分関数の微分

関数 \( f \) が区間 \([a, b]\) 上で連続であるとき、次の関数 \( F(x) \) を定義します:

$$ F(x) = \int_a^x f(t) \, dt $$

このとき、\( F \) は微分可能であり、その導関数は次のようになります:

$$ F'(x) = f(x) $$

つまり、「区間 \([a, x]\) にわたって関数 \( f \) を積分した結果の関数を微分すると元の関数 \( f(x) \) に戻る」ということを意味します。

例1:簡単な関数で確認

\( f(t) = t^2 \) として、\( F(x) = \int_0^x t^2 dt = \frac{1}{3}x^3 \) です。この \( F(x) \) を微分すると

$$ F'(x) = \frac{d}{dx} \left( \frac{1}{3}x^3 \right) = x^2 = f(x) $$

が確かに成立します。

第2基本定理:不定積分の活用

\( f \) が連続関数であり、\( F \) が \( f \) の不定積分(すなわち \( F'(x) = f(x) \))であるとき、次が成り立ちます:

$$ \int_a^b f(x)\,dx = F(b) – F(a) $$

これにより、定積分の計算は原始関数(不定積分)を使って簡単に求めることができます。

例2:三角関数

\( f(x) = \cos(x) \) の原始関数は \( F(x) = \sin(x) \) です。したがって、

$$ \int_0^{\pi} \cos(x)\,dx = \sin(\pi) – \sin(0) = 0 – 0 = 0 $$

具体例で理解する基本定理

例3:指数関数

\( f(x) = e^x \) に対して、

$$ \int_0^1 e^x\,dx = e^1 – e^0 = e – 1 $$

例4:分数関数

\( f(x) = \frac{1}{x} \)(ただし \( x > 0 \))のとき、原始関数は \( F(x) = \ln x \) なので、

$$ \int_1^e \frac{1}{x}\,dx = \ln(e) – \ln(1) = 1 – 0 = 1 $$

直感的な理解と視覚的イメージ

基本定理を視覚的にとらえるには、グラフの面積を考えるとわかりやすくなります。第1基本定理は「面積を蓄積した関数を微分すると、元の関数の高さが得られる」ことを意味します。

一方で第2基本定理は「2点間の面積は、原始関数の値の差に等しい」と考えれば納得がいきます。

応用と意義

この定理は数学のみならず、物理や工学、経済学などの分野でも広く利用されます。例えば、速度(微分)と距離(積分)の関係、電流と電荷の関係など、時間とともに変化する量の累積を扱うあらゆる場面で使われます。

また、この定理によって数値積分や微分方程式の解析的解法への足がかりが得られます。

まとめ

  • 第1基本定理は「積分→微分=元の関数」となる。
  • 第2基本定理は「定積分=原始関数の値の差」となる。
  • この2つの定理により、微分と積分は密接に関係していることがわかる。
  • 視覚的にも、積分は「面積」、微分は「傾き」というイメージで結びつけられる。

微分積分学の基本定理は、解析学の基礎を成すだけでなく、あらゆる応用数学の根幹でもあります。これを深く理解することは、数学の本質に触れる第一歩となるでしょう。

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