【収束判定】コーシーの凝集判定法を解説
目次
コーシーの凝集判定法とは
コーシーの凝集判定法(Cauchy condensation test)は、無限級数の収束・発散を判定するための強力な手法です。 特に、項が単調減少で正の値を取る場合に適用できます。
この判定法では、元の級数を「凝集」させた別の級数に置き換えて、その収束性を調べます。 計算の手間が省け、特に対数や冪乗が絡む級数において有効です。
定理の内容と数式表現
以下がコーシーの凝集判定法の定理です。
定理(コーシーの凝集判定法):
\( \{a_n\} \) が正の単調減少数列(すなわち、\( a_n > 0 \) かつ \( a_{n+1} \leq a_n \))であるとする。
このとき、無限級数
\[
\sum_{n=1}^\infty a_n
\]
が収束する必要十分条件は、次の凝集された級数
\[
\sum_{n=0}^\infty 2^n a_{2^n}
\]
が収束することである。
証明の概要
証明のアイディアは、元の級数の項をブロックごとにまとめて、上下から評価することです。 各ブロックは \( a_{2^n} \) から \( a_{2^{n+1}-1} \) までの項から成り、これらの項を一括して近似的に扱います。
\( \{a_n\} \) が単調減少であることを利用して、次の評価が可能です:
- \( a_{2^n} \geq a_k \geq a_{2^{n+1}-1} \) for \( 2^n \leq k < 2^{n+1} \)
- ブロック内の項数は \( 2^n \)
したがって、各ブロックの和は以下のように評価できます:
\[ 2^n a_{2^{n+1}-1} \leq \sum_{k=2^n}^{2^{n+1}-1} a_k \leq 2^n a_{2^n} \]両辺を合計すると、元の級数と凝集級数の収束性が一致することがわかります。
具体例と応用
例1: 調和級数 \( \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n} \)
\( a_n = \frac{1}{n} \) は正の単調減少列なので、凝集判定法が適用できます。
\[ \sum_{n=0}^\infty 2^n \cdot \frac{1}{2^n} = \sum_{n=0}^\infty 1 \]これは発散するので、元の級数も発散します。
例2: \( \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n \log n} \)(\( n \geq 2 \))
この級数も単調減少で正です。
\[ \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n \log n} \]凝集版は:
これは発散するので、元の級数も発散。
例3: \( \sum_{n=2}^\infty \frac{1}{n (\log n)^2} \)
\[ \sum_{n=0}^\infty 2^n \cdot \frac{1}{2^n (\log 2^n)^2} = \sum_{n=0}^\infty \frac{1}{(n \log 2)^2} \]これは \( \sum \frac{1}{n^2} \) 型の収束級数なので収束。 よって元の級数も収束。
他の収束判定法との比較
| 判定法 | 適用条件 | 特徴 |
|---|---|---|
| コーシーの凝集判定法 | 正・単調減少な数列 | 計算が容易で、対数・冪乗型に強い |
| 積分判定法 | 正値連続関数と対応可能な場合 | 直感的に理解しやすいが積分が難しい場合も |
| 比較判定法 | 既知の収束・発散級数と比較 | 比較対象の選び方がカギ |
まとめ
- コーシーの凝集判定法は、単調減少な正項級数に使える強力な収束判定法。
- 元の級数を凝集級数 \( \sum 2^n a_{2^n} \) に変形して、そちらの収束を判定。
- 計算が簡単になるケースも多く、特に対数や冪乗が含まれる級数に有効。
他の判定法とうまく使い分けることで、無限級数の収束・発散を効率的に見極めることができます。