ガウス積分の多様な形と証明

ガウス積分の多様な形と証明

この結果は、解析学や統計学、量子力学などで極めて重要な役割を果たします。

極座標を用いた証明

この積分値を導くためには、2次元に拡張し、極座標変換を用います。

まず、次の2重積分を考えます:

\[ I^2 = \left( \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2} \, dx \right)^2 = \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x^2 + y^2)} \, dx \, dy \]

ここで、\( x^2 + y^2 = r^2 \) を利用して、極座標に変換します:

\[ I^2 = \int_0^{2\pi} \int_0^{\infty} e^{-r^2} \cdot r \, dr \, d\theta \]

内側の積分は \[ \int_0^{\infty} r e^{-r^2} \, dr \] であり、置換 \( u = r^2 \) により、 \[ \int_0^{\infty} e^{-u} \cdot \frac{1}{2} \, du = \frac{1}{2} \]

よって、 \[ I^2 = \int_0^{2\pi} \frac{1}{2} \, d\theta = \pi \Rightarrow I = \sqrt{\pi} \]

ガウス積分の一般化

より一般的な形のガウス積分も多くの応用で登場します。たとえば、以下のような形:

\[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-a x^2} \, dx = \sqrt{\frac{\pi}{a}} \quad (a > 0) \]

これは先ほどの結果をスケーリング変換で得られます。変数変換 \( x = \frac{u}{\sqrt{a}} \) を使えば、 \[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-a x^2} \, dx = \frac{1}{\sqrt{a}} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-u^2} \, du = \sqrt{\frac{\pi}{a}} \]

この形式は統計学でよく使われる正規分布関数に直結します。

複素解析を用いた証明

複素積分を用いると、より一般的なガウス型積分やフーリエ変換との関係を明確に理解できます。例として、次の積分:

\[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x^2 + 2i a x)} \, dx \]

を考えると、被積分関数は複素指数関数であり、平方完成により \[ x^2 + 2i a x = (x + i a)^2 - a^2 \] よって、 \[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x + i a)^2 + a^2} \, dx = e^{a^2} \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x + i a)^2} \, dx \]

積分路の移動により値は変わらず、結果として \[ \int_{-\infty}^{\infty} e^{-(x^2 + 2i a x)} \, dx = \sqrt{\pi} e^{-a^2} \]

これはフーリエ変換と深く関係しており、信号処理や量子力学の基礎でもあります。

応用例:物理学・統計学との関係

ガウス積分は理論的な美しさだけでなく、さまざまな分野で具体的に活用されています。

  • 統計学:正規分布の確率密度関数の正規化に使用。
  • 量子力学:波動関数の正規化やパス積分の評価に登場。
  • 熱力学:ボルツマン因子の積分に現れ、分配関数の導出に寄与。
  • 機械学習:ガウスカーネル(RBFカーネル)に関する理論。

さらに、多変量ガウス分布においては、以下のような積分が必要になります:

\[ \int_{\mathbb{R}^n} \exp\left( -\frac{1}{2} x^\top A x \right) dx = \sqrt{\frac{(2\pi)^n}{\det A}} \quad (A: 正定値行列) \]

まとめ

ガウス積分は単なる積分計算にとどまらず、解析学の核をなすテーマの一つです。基本形の積分値の導出から、極座標や複素解析を用いた応用的な証明、多分野における具体的な応用まで、非常に多くの数学的構造と接続しています。

本記事では省略を避け、可能な限りの例と変形を紹介しました。理解を深めるには、実際に手を動かして証明を追うことが有効です。ぜひ挑戦してみてください。

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