【徹底解説】行列式の定義と求め方を完全マスター!
行列式(determinant)は線形代数において非常に重要な概念の一つです。本記事では、行列式の厳密な定義から、実際に手を動かして計算するための方法まで、豊富な例を交えて徹底的に解説します。
目次
行列式の定義
行列式は、正方行列 \( A \) に対して定義され、通常 \(\det(A)\) または \(|A|\) と表記されます。
例えば、\(2 \times 2\) 行列の場合、
\[ A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \quad \Rightarrow \quad \det(A) = ad – bc \]
\(3 \times 3\) 行列では、次のように定義されます:
\[ A = \begin{pmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix} \]
\[ \det(A) = a_{11}(a_{22}a_{33} – a_{23}a_{32}) – a_{12}(a_{21}a_{33} – a_{23}a_{31}) + a_{13}(a_{21}a_{32} – a_{22}a_{31}) \]
一般に \(n \times n\) 行列に対しては、再帰的に余因子展開(ラプラス展開)により定義されます。
行列式の基本性質
- 行列式は行列の行または列を交換すると符号が反転する。
- 行列にスカラー \(k\) をかけると、行列式は \(k^n\) 倍される(\(n\) は行列の次数)。
- 行列が三角行列または対角行列である場合、行列式は対角成分の積である。
- 行列の行や列に線形従属がある(つまりランクが低い)場合、行列式は 0 になる。
- 行列積 \(AB\) の行列式は、\(\det(AB) = \det(A)\det(B)\) を満たす。
余因子展開による求め方
ある行や列を基準にして、各要素に対応する小行列の行列式を用いて展開する方法です。
3次の例:
\[ \det(A) = a_{11} \cdot C_{11} + a_{12} \cdot C_{12} + a_{13} \cdot C_{13} \]
ここで \(C_{ij}\) は余因子と呼ばれ、
\[ C_{ij} = (-1)^{i+j} \cdot M_{ij} \]
\(M_{ij}\) は \(a_{ij}\) を除いた小行列の行列式です。
三角行列を使った求め方
行列を上三角または下三角行列に変形できる場合、対角成分の積がそのまま行列式になります。
例えば:
\[ \begin{pmatrix} 2 & 3 & 1 \\ 0 & 4 & 5 \\ 0 & 0 & 6 \end{pmatrix} \quad \Rightarrow \quad \det = 2 \cdot 4 \cdot 6 = 48 \]
初等変形による効率的な求め方
以下の初等変形を使って、効率的に三角行列へ変換する方法です:
- ある行に定数倍する:行列式もその定数倍される。
- 2行を入れ替える:行列式の符号が反転する。
- ある行に他の行の定数倍を加える:行列式は変わらない。
ガウス消去法を使い、行列を上三角形にしながら各操作の影響を反映することで、より計算が楽になります。
具体的な計算例
例1:2次の行列
\[ A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} \quad \Rightarrow \quad \det(A) = 1 \cdot 4 – 2 \cdot 3 = -2 \]
例2:3次の行列
\[ A = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 2 \\ -1 & 3 & 1 \\ 2 & -2 & 1 \end{pmatrix} \]
第1行を基準に余因子展開:
\[ \det(A) = 1 \cdot \begin{vmatrix} 3 & 1 \\ -2 & 1 \end{vmatrix} – 0 \cdot \begin{vmatrix} -1 & 1 \\ 2 & 1 \end{vmatrix} + 2 \cdot \begin{vmatrix} -1 & 3 \\ 2 & -2 \end{vmatrix} \]
\[ = 1 \cdot (3 \cdot 1 – (-2) \cdot 1) + 2 \cdot (-1 \cdot (-2) – 3 \cdot 2) = 1 \cdot 5 + 2 \cdot (2 – 6) = 5 + 2 \cdot (-4) = 5 – 8 = -3 \]
まとめ
- 行列式は行列の性質を知る上で不可欠な数値である。
- 定義は再帰的だが、実践的な計算では余因子展開や初等変形を活用するのが一般的。
- 三角行列に帰着させれば、計算は非常に効率的になる。
- 大小問わず多くの具体例を通じて理解を深めることが重要。
以上で、行列式の定義とその計算方法の解説を終わります。理解を深めるために、自分で手を動かして計算練習をしてみましょう。