回行列の行列式を完全理解するための徹底ガイド

回行列の行列式を完全理解するための徹底ガイド

目次

巡回行列(循環行列)とは

巡回行列(circulant matrix)とは、各行が前の行を右に1つずつ巡回(シフト)させた形になっている正方行列のことです。

例えば、ベクトル \( \mathbf{a} = (a_0, a_1, \dots, a_{n-1}) \) に対して、対応する巡回行列 \( C \) は次のようになります:

\[ C = \begin{bmatrix} a_0 & a_1 & a_2 & \cdots & a_{n-1} \\ a_{n-1} & a_0 & a_1 & \cdots & a_{n-2} \\ a_{n-2} & a_{n-1} & a_0 & \cdots & a_{n-3} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_1 & a_2 & a_3 & \cdots & a_0 \end{bmatrix} \]

このように、各行は上の行を右に1つずつシフトしたものになっています。

巡回行列式の直接的な計算方法

巡回行列の行列式は、直接的に計算しようとすると計算量が大きくなります。たとえば3次の巡回行列では、通常の行列式の定義を使って計算することができます。

例:3次の巡回行列 \[ C = \begin{bmatrix} a & b & c \\ c & a & b \\ b & c & a \end{bmatrix} \] この行列の行列式は次のように計算できます: \[ \det(C) = a^3 + b^3 + c^3 – 3abc \]

これは有名な対称式の一種です。3次まではこのように具体的に展開することも可能ですが、次数が上がると複雑になり、一般式での計算が困難になります。

固有値を使った巡回行列式の計算

巡回行列の強力な性質の一つは、フーリエ変換を使って対角化できることです。この性質を使うと、行列式を効率よく計算できます。

巡回行列 \( C \) の固有値は次のように表されます: \[ \lambda_k = \sum_{j=0}^{n-1} a_j \omega_n^{jk} \quad (k = 0, 1, \dots, n-1) \] ただし、\( \omega_n = e^{2\pi i / n} \) は \( n \) 次単位根です。

このとき、行列式は固有値の積であるため、次のように求まります: \[ \det(C) = \prod_{k=0}^{n-1} \lambda_k \]

これは特に数値計算や理論解析において非常に有用です。

具体例で学ぶ巡回行列式の計算

例1:ベクトル \( (1, 2, 3) \) による3次巡回行列 \[ C = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 3 & 1 & 2 \\ 2 & 3 & 1 \end{bmatrix} \] この場合、固有値は次のように求められます: \[ \omega_3 = e^{2\pi i / 3}, \quad \lambda_0 = 1 + 2 + 3 = 6 \] \[ \lambda_1 = 1 + 2\omega_3 + 3\omega_3^2 \] \[ \lambda_2 = 1 + 2\omega_3^2 + 3\omega_3 \] これらの積を取れば行列式が得られます。

実数で計算するには複素数の積の絶対値を取ることもあります。

例2:すべての成分が1の4次巡回行列 \[ C = \begin{bmatrix} 1 & 1 & 1 & 1 \\ 1 & 1 & 1 & 1 \\ 1 & 1 & 1 & 1 \\ 1 & 1 & 1 & 1 \end{bmatrix} \] この行列は階数1であり、固有値は \( 4, 0, 0, 0 \) となるため、 \[ \det(C) = 0 \] となります。これは、行が線形従属であることに対応しています。

まとめ

  • 巡回行列は各行が前の行を右に1つ巡回させた正方行列である。
  • 3次程度までは直接展開して行列式を計算できるが、それ以上では固有値を使うのが一般的。
  • 巡回行列の固有値は離散フーリエ変換によって求められ、それらの積が行列式になる。
  • 数式処理や信号処理の応用においても巡回行列は非常に重要である。
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