連立方程式攻略:クラメルの公式をマスターする

連立方程式攻略:クラメルの公式をマスターする

目次

クラメルの公式とは

クラメルの公式(Cramer’s Rule)は、連立一次方程式を行列を用いて解く方法の一つです。 特に、係数行列が正則(逆行列が存在)であるときに有効です。 連立方程式の解を行列式(determinant)で表すことができるため、代数的に解を求められる強力なツールです。

使える条件

クラメルの公式が使えるのは、次のような条件が満たされている場合です:

  • 未知数の数と方程式の数が同じ(正方行列)
  • 係数行列の行列式が 0 でない(正則行列)

この条件を満たさない場合、クラメルの公式は使用できません。 特に、行列式が 0 のときは解が一意に定まらない(解が無数にあるか、解が存在しない)ことになります。

公式の内容

\( n \) 個の未知数 \( x_1, x_2, \dots, x_n \) を含む連立一次方程式が以下の形で与えられているとします:

\[ A \mathbf{x} = \mathbf{b} \]

ここで、

  • \( A \):\( n \times n \) の係数行列
  • \( \mathbf{x} = \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_n \end{bmatrix} \)
  • \( \mathbf{b} = \begin{bmatrix} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_n \end{bmatrix} \)

係数行列 \( A \) の列ベクトルのうち、i列目を定数ベクトル \( \mathbf{b} \) に置き換えた行列を \( A_i \) とすると、各 \( x_i \) は以下の式で求められます:

\[ x_i = \frac{\det A_i}{\det A} \]

この式を \( i = 1, 2, \dots, n \) に対して適用することで、すべての未知数を求めることができます。

具体例

次の2元連立方程式をクラメルの公式で解いてみましょう:

\[ \begin{cases} 2x + 3y = 8 \\ 4x – y = 2 \end{cases} \]

まず、係数行列 \( A \) と定数ベクトル \( \mathbf{b} \) を定めます:

\[ A = \begin{bmatrix} 2 & 3 \\ 4 & -1 \end{bmatrix}, \quad \mathbf{b} = \begin{bmatrix} 8 \\ 2 \end{bmatrix} \]

行列式 \( \det A \) を求めます:

\[ \det A = 2 \cdot (-1) – 4 \cdot 3 = -2 – 12 = -14 \]

次に、xのための行列 \( A_1 \):

\[ A_1 = \begin{bmatrix} 8 & 3 \\ 2 & -1 \end{bmatrix}, \quad \det A_1 = 8 \cdot (-1) – 2 \cdot 3 = -8 – 6 = -14 \]

同様に、yのための行列 \( A_2 \):

\[ A_2 = \begin{bmatrix} 2 & 8 \\ 4 & 2 \end{bmatrix}, \quad \det A_2 = 2 \cdot 2 – 4 \cdot 8 = 4 – 32 = -28 \]

よって、解は以下のようになります:

\[ x = \frac{-14}{-14} = 1, \quad y = \frac{-28}{-14} = 2 \]

この連立方程式の解は \( (x, y) = (1, 2) \) です。

証明

クラメルの公式の証明は行列の基本性質と余因子展開を利用します。以下はその概要です。

まず、行列 \( A \) の逆行列が存在する場合、解は

\[ \mathbf{x} = A^{-1} \mathbf{b} \]

ですが、逆行列の各要素は余因子と行列式を使って次のように表せます:

\[ A^{-1} = \frac{1}{\det A} \cdot \text{adj}(A) \]

ここで、adj(A) は A の随伴行列であり、各要素は余因子です。

したがって、

\[ \mathbf{x} = \frac{1}{\det A} \cdot \text{adj}(A) \cdot \mathbf{b} \]

この式を展開すると、各 \( x_i \) は \(\det A_i / \det A\) に一致することが示されます(証明の詳細は余因子の性質に基づいて計算される)。

注意点とまとめ

  • クラメルの公式は理論的には強力ですが、大きな行列(nが大きい)では行列式の計算コストが高くなるため、実用的にはガウスの消去法などが好まれます。
  • 逆行列が存在しない(行列式が0)の場合は使用できません。
  • 数学の入試や工学の初歩において、少数の変数に対して使うには非常に有効です。

クラメルの公式を使いこなすことで、連立方程式をスムーズに解けるようになり、線形代数の理解も一層深まります。

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